杏寿郎くんがランニングから帰って来た。 まだ正月二日目だというのに、朝早くから出掛けてこの時間までずっと鍛練していたのだというから凄い。 「お帰りなさい。いま食事の用意をしているから、先にお風呂に入ってきてね」 「結婚しよう!」 「杏寿郎くんったら、またそんなことを言って」 「本気にしてもらえないのは、俺に何か問題があるのだろうか」 「そんなことないよ。でも、杏寿郎くんはいつか元の時代に帰っちゃうでしょ?」 「それは……」 「ほらほら、早くお風呂入っておいで。汗が冷えちゃうよ」 「そうだな。すまない、行って来る」 杏寿郎くんに着替えを渡して、彼が浴室に向かったのを見届けてから食事の支度に戻る。 お節料理はまだ少し残っているが、何しろ杏寿郎くんは良く食べるのだ。 年越し蕎麦なんて十杯もおかわりしていた。しかも、私に遠慮してそれだというから鉄の胃袋の持ち主である。 「良い湯だった。ありがとう!」 「どういたしまして。ご飯出来てるよ」 「いただこう!」 うまい!うまい!と連呼しながら料理をたいらげていく杏寿郎くんを眺めつつ、私もお節料理の残りを食べる。 そうして二人とも食べ終えたら、杏寿郎くんが午後の鍛練を始める前に、二人してテレビを見ながら食休みを兼ねたまったりタイムを過ごす。 テレビでは新春特番をやっていて、華やかな着物を着た女性達が新年の様子を紹介したり、クイズに挑戦したりしていた。 「こちらの女性は美人ばかりだが、俺には皆似たような顔に見えてしまうな」 「そっか、流行りのお化粧の仕方とかあるから、そのせいかな?」 「君は可愛らしくてとても綺麗だ」 「ありがとう」 「これでも口説いているつもりなんだが」 「うんうん、嬉しい」 「むぅ……」 |