失敗した。 それがわかったのは、上手い具合に誘導され、バレンタインには皆に義理チョコや友チョコを渡す予定だと白状してしまったあとだった。 ドサッとソファに押し倒され、上から骸が覆い被さってくる。 骸の髪が頬を掠めるくらい至近距離から見つめられて、顔の熱が上がるのを感じた。 「む、むくろ…」 「悪い子だ」 艶やかな声に甘くなじられて目を瞬かせる。 「僕以外の男にチョコを渡すなんて」 「だ、だって」 「言い訳は聞きません」 「んっ…んっ」 これ以上言葉を紡がせないとばかりに唇を奪われた。 何度も角度を変えて口付けられる内に、強張っていた身体から力が抜けていく。 顔を離した骸を、とろりと蕩けた瞳で見上げる。 不穏に細められた赤と青のオッドアイ。 一対の宝石のような美しいそれに息を飲んで見惚れてしまう。 花びらのような唇がゆっくりと動いて言葉を紡いだ。 「君のチョコは僕だけのものだ」 ■バレンタイン決戦 君がチョコを渡せるのは僕だけですよ |