「蛮ちゃん、俺さっき怖い話聞いちゃった」

「怖い話だぁ?」

「うん……最近、この辺りで泣いてたり困ってたりする人がいると、何処からともなく黒い帽子とコートの男が現れて、『私の身体をお食べなさい』って自分の肉を食べさせようとしてくるんだって」

「なんだそりゃ。新しいタイプの変質者だな」

「それがさ…なんか、焼きたてのパンみたいな味がするとかで、結構美味しいらしいんだよね」

「食った奴がいんのかよ!?」




「お帰りなさい、赤屍さん。今日もパトロールお疲れ様です」

「ただいま戻りました。おや、良い香りですね。パンを焼いているのですか?」

「はい。今日はさつまいもパンを焼いてみました」

「それは美味しそうだ」

「うふふ、焼けたら一緒に食べましょうね。今日のパトロールはどうでした?」

「いつも通り、怖がられて逃げられてしまいました。なかなか上手くいかないものですねえ」

「仕方ないですよ。最初は誰でもびっくりしちゃいますから。私もそうでしたし」

「そういえばそうでしたね。怯えて逃げ回る貴女を追いかけて捕まえて口移しで半ば無理矢理食べさせたのでした。あの時は興奮してゾクゾクしてしまいましたよ」

「赤屍さん、その言い方怖いです……でも本当に恐怖体験でした、あれは。今でも軽くトラウマですよ…無理矢理食べさせられたのにすごく美味しかったから余計ショックだったというか」

「クク…おやおや」


今日もバネパンマンは貴女の町をパトロールしています。



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