センター試験当日。
いよいよ本番だ。

会場までは赤屍と同じ運び屋の馬車にタクシーで送って貰った。
運び屋の仕事のときはノンストップ暴走トラック野郎の彼だが、タクシーの運転手のときの彼は実にテクニカルかつ安全運転で、安心して乗る事が出来た。

「馬車さん、有難うございました!」

「おう。頑張れよ」

「はい!」

タクシーを降りたなまえは馬車に頭を下げた。
早めに出発して順調に到着出来たため、試験開始時間までにはまだかなり余裕がある。

いつものものより少し厚手のロングコートを着た赤屍が「なまえさん」と呼びかけた。

「お昼に食べるお弁当は鞄の中に入れてあります。カツサンドですよ」

「サクサクでジューシーなやつですか」

「サクサクでジューシーなやつです」

「有難うございます楽しみです!」

参考書や教科書を片手に食べられるようにとの配慮だろう。
今からお昼が楽しみだ。もう口の中がカツサンドの味がしている。

「緊張するなというのも無理かもしれませんが、あまり思い悩まないように。これまで勉強してきたことが頭に入っているのは間違いないのですから、自分を信じて頑張って下さい」

「赤屍さん……はい!」

なまえは赤屍にぎゅっと抱きついた。
クスッと笑った赤屍が頭を撫でてくれる。
ちょっと周囲の視線が痛いが気にしない。
栄養補給、栄養補給。

それから、ぱっと身を離して少し赤くなった顔で赤屍に手を振り、なまえは小走りで会場の中に入って行った。



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