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現界してから、基本カルナは側にいてくれる。
空中庭園に来てからもそうだったのだが、今は他の元マスター達が居る部屋も見張ってくれていた。
どうやらアサシン──アッシリアの女帝セミラミスは、彼らを始末してしまいたいらしいから。
カルナは他の元マスター達を彼女から守ってくれているのだ。

「カルナ」

「呼んだか、マスター」

打てば響くようにすぐ返答があったことにほっとしたのも束の間、現れたカルナが濡れていたので驚いた。
もしかして外は雨が降っているのだろうか。

「どうしたの?そんなに濡れて」

「沐浴をしていた」

「風邪…はひかないだろうけど、濡れたままだと身体が冷えちゃう」

あたふたとタオルを取り出してカルナの身体を拭こうとした途端、その身体から水分がシュッと蒸発した。
えっ、と思ったが当たり前と言えば当たり前だった。
彼は太陽神の子なのだ。

「びっくりした」

「すまない」

「いいの。大丈夫だよ」

背伸びしてカルナの頭を撫でれば、神妙な顔つきで大人しく撫でられていた。

「そういえば、沐浴って?」

「この空中庭園にある泉で時々沐浴をしている」

「そうだったの」

「サーヴァントには必要ない行為だとわかっているが、昔からの習慣というものはなかなか抜けないものだな」

「身を清めるのは良いことだよ。身も心もしゃんとするよね」

「お前も身を清めてきたのか」

「えっ?」

「花のような甘い香りがする」

カルナがなまえの髪に顔を寄せて囁いたので、なまえは赤くなりながら身を離した。

「う、うん。シャワーを浴びてきたところ」

「マスター、俺は何かおかしなことを言ったか?」

「ううん。私が恥ずかしかっただけ。挙動不審でごめんね」

「恥ずかしい?」

「だって、カルナみたいな綺麗な男の人にさっきみたいなことされたら恥ずかしくなっちゃうよ」

「サーヴァントである俺を男として認識してくれるのか」

「ごめんね」

「謝る必要はない。これでも喜んでいるつもりなのだが、やはり伝わらないか…難しいものだな」

「喜んでる?」

「ああ。俺を男として見てくれることは嬉しい」

「カルナ…」

「何も言わなくていい。わかっている」

カルナは優しい手つきでなまえの頭を撫でた。
先ほどなまえが彼にそうしたように。

「全てはお前の望むままに。俺は最後までお前のサーヴァントとして戦うことを誓おう」

「カルナ…ありがとう」

「礼には及ばない。マスター」

これを、と差し出されたものを受け取る。
それは一輪の花だった。

「泉の畔に咲いていたものだ。可憐で健気なところがお前に似ていたので摘んで来た」

「あ、ありがとう」

「お前が喜んでくれたのならそれでいい」

どうしてこのひとはそういうことをさらっと言っちゃうのかな。
なまえは赤くなりながらも、その小さな花を大切そうにそっと胸に押し抱いた。

すぐに枯れてしまうかもしれない。

でも、なまえの胸の中にこの花は咲き続けるだろう。

彼が側からいなくなってしまっても。
ずっと。


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