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前から思っていたけれど、カルナは細い。
細くくびれた腰などは羨ましくなるほどである。

初めて彼を見た時、真っ先に長身痩躯という言葉が思い浮かんだ。
もしも彼が人間の男性なら、ちゃんとご飯を食べているのか心配になっていただろう。

とはいえ、ちゃんと筋肉はついている。
胸板だってしっかりしているし、槍を振るう腕も細いながらも力強さが感じられる。
筋力Bだし、サーヴァントだし、私が心配するまでもないのかもしれない。

「マスター、少し我慢してくれ」

「えっ、きゃっ!?」

カルナが私を抱き上げて、地を蹴る。
それはまさしく“飛んだ”という表現が相応しい、人間離れした跳躍だった。

高い!速い!

何度か木の枝を足場にして森の中を進んでいき、ある程度離れた場所まで来ると、彼はそっと私を地面に降ろした。

「すまない、不快だっただろう。だが、あの場にいれば戦闘に巻き込まれる危険があった」

「全然嫌なんかじゃないよ。気遣ってくれてありがとう」

「俺に触れられるのは嫌ではないと?」

「うん、もちろん」

私はカルナを安心させるために笑顔で頷いた。

「私はマスターとしてカルナのことを信頼しているし、もし、マスターとサーヴァントという関係じゃなかったとしても、カルナに触れられるのは嫌じゃないよ」

「そうか。ならば、次からは遠慮はしない」

「う、うん?」

「他の連中が追いついて来たようだ」

見れば、森の中を見慣れた面子がこちらに向かって歩いて来るところだった。
おーい、と手を振って駆けて来るのを見て、私も手を振り返す。
無事に合流出来て良かった。

「どうだい、マスター。そろそろ私に相談したくなったんじゃないかな」

にこやかに歩み寄って来たマーリンが耳打ちする。

「えっ」

「会ったばかりの頃に言っただろう?『今まで遠くから見ていたわけだけど、これからは共に歩いていく仲間だ。頼りにしてほしい。特に恋の悩みとか、その手の相談は大歓迎だよ』」

そういえば、そんなことを言われた覚えがある。
しかし、それにしても。

「恋?」

「あれ?違った?」

マーリンは可笑しそうに笑っていた。

「自覚がないとは。これでは彼も苦労するね」

「ねぇ、マーリン。なんのこと?」

「いいさ。君達の場合、黙って見守っているほうが楽しそうだ」

ほら、と。
トンと肩を押され、僅かによろめきながら後退る。
その私を、背後にいたカルナが受け止めて支えてくれた。

「ありがとう」

「いや、こういうのを役得というのだろう。礼を言うのは俺のほうだ」

「?」

私がわからない、といった顔をしたのがおかしかったのか、マーリンが声をあげて笑う。
カルナは表情こそ変わらないものの、どこか雰囲気が柔らかく変わった気がする。
彼の手はまだ私に触れたままだ。

何となく。

何となく、その手が触れている場所があたたかく感じられた。


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