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「あまり身長が高くない男をどう思う」

ナナミは飲み物を運んで来た恰好のまま固まった。
答えを間違えれば、間違いなく削がれる。
ナナミばかりでなく、店内全ての客が固唾を飲んで問答の行方を見守っていた。
流しのバイオリン弾きの演奏が丁度『紅蓮の弓矢』のサビに差し掛かったところだ。
否が応にも緊張感が高まっていく。

「し…身長はあまり気にしたことがありません。私もどちらかと言えば小さいほうだし…」

何とかフリーズから回復したナナミがリヴァイの前に飲み物を置きながら答える。

「何センチだ」

「えっと、最後に測った時には155か6くらいだったと思います」

リヴァイの視線が身体の上を這うのを感じながらナナミはうつ向いた。
背が低いのはナナミの家が貧しく、栄養状態があまり良くなかったせいだ。
少なくともナナミ自身はそう信じている。
ただ、胸は母親譲りでそれなりに大きい。

「歳上の男は好きか」

「えええ……あの、恋愛対象、という意味ですか…?」

「ああ」

「そんなに何十歳も離れていなければいいのではないかと……」

「そうか」

納得したのかどうなのか、リヴァイはフンと鼻を鳴らして飲み物を煽った。
グビリと飲み込む拍子に喉仏が動くのがナナミにも見えた。
瞳を伏せて一つ息をつき、颯爽と立ち上がる。
元ゴロツキだという噂もあるが、こうして見ると貴公子っぽく見えなくもない。

「オヤジ、勘定だ」

「へい、毎度どうも。有り難うございます」

ペコペコとお辞儀をして送り出そうとした店主は、ギョッとした。
木製のテーブルの上に無造作に置かれた金は、飲み物一杯の代金にしてはあまりにも多すぎたからだ。

「あの、これは……」

「ああ?何度も言わせんな。勘定だと言っただろうが」

「きゃっ」

突然リヴァイに担ぎ上げられたナナミは小さく声を上げた。
男はナナミを肩に担いだまま、すたすたと歩いて店を出ていく。
店主は慌てて引き留めた。

「ああっ、お待ちを!うちはそういうサービスはやっておりませんっ!」

「うるせぇ。これは俺の女にする。たった今そう決めた」

「お、下ろして下さい!」

「おいおい、この状況で逃げられるとでも思ってんのか?」

リヴァイは肩越しに獰猛な笑みを覗かせた。
ナナミがひっと息を飲む。

「逃がす気はねぇが、面倒だ。そのまま大人しくしてろ」

青ざめて震えはじめた女を肩に、男は上機嫌で夜の町に消えて行った。



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