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訓練生として、岩に齧りつく思いで必死に訓練を受けていた頃、初めてリヴァイ兵長の“それ”を見た。
所謂実技演習だったわけだが、あれほど見事に立体起動装置を自在に扱える人間を他に見たことがない。

何か質問はあるかと聞かれたので、私は勇んで手を挙げた。

「あれほど見事に立体起動装置を使いこなすには、やはり適した身長や体格というものがあるのでしょうかっ!?」

一秒後、私の頭蓋骨は兵長によって握り潰される一歩手前までいった。

同僚やエルヴィン団長には未だにその時の話を持ち出されては笑われてしまうし、兵長にはネチネチと虐められている。
よほどいい度胸をしているのか、それともただの馬鹿か。
当時私の質問を聞いた兵長は判断に迷ったらしいが、こうして調査兵団に加えられているところを見ると、少なくとも使える奴だと判断されたのは間違いないだろう。
何故なら、私をリヴァイ班に入れるように団長に口添えしてくれたのは兵長だからだ。

「お前は町に置いておくのさえ危なかっしい」などと憎まれ口を叩かれたり、物理的に叩かれたり、肉体的にも精神的にもこれでもかというほど苛め抜かれているけれど、どうやら自分は兵長に気に入られているらしいということに最近気が付いた。

「やっとか!」

「遅っ!」

「ようやく気が付いてくれたのね!」

それに対する同僚の反応がこれである。
新兵になったばかりのペーペーな私なんかよりもずっと長く兵長と共に戦ってきた彼らはとっくに気付いていたのだろう。
私の心は過酷な壁外調査から帰還した時に飲むスープのような優しい暖かさに包み込まれた。
私も早く彼らとそんな信頼関係が築けるようになりたい。

「はい!やっとわかりました!」

「そうかそうか」

「良かったですね、兵長…」

ペトラさんなんて美しい瞳を潤ませている。

「正直言って、私なんかの何処を気に入って下さったのかさっぱり分かりませんが、兵長の期待に応えられるように頑張ります!!」

気合いを込めて言ったのだが、何故かその場は静まりかえった。

「ほーらね、やっぱり言った通りじゃないか。絶対ないって。ないない、勘違い〜ってさ」

ハンジさんが言うと、「ダメだ…」「そんな…」「なんてことだ…」と絶望に満ちた囁きが行き交った。

「ああ、そんなこったろうと思ってたぜ」

ガシッと首根っこを掴まれ、座っていた椅子から引き上げられる。

「へ…兵長…?」

「訓練生だった頃から思っていたが、お前は底抜けの馬鹿だ。そして馬鹿には馬鹿なりのわからせ方ってもんがある」

兵長は巨人も裸足で逃げ出しそうな恐ろしい笑いを浮かべた。
そしてそのまま歩き出した。
首根っこを掴まれたままの私はずるずると引き摺られていくしかない。

「口で言ってわからねぇ奴には、カラダでわからせねぇとなぁ?ナナミよ」

「え、……えっ?」

その晩、兵長の部屋で行われた“実技訓練”のせいで、私は翌日ベッドから起き上がれなかった。


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