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「いい茶葉が手に入った」

リヴァイ兵士長からそう告げられた時、一瞬何を言われているのかわからなくてぽかんとしてしまった。
それから、ああ、そういえば兵長は紅茶がお好きだったなと思い返して、

「良かったですね!」

「飲みに来い」

「このご時世だと、なかなか良いものは……は?」

「飲みに来い」

「あの…いえ…でも…」

「焼き菓子もある」

「お邪魔させて頂きます!」

現金な奴と思わないでほしい。
私のような一般兵にとって焼き菓子は干し肉と同じくらい貴重な食料なのだ。
そう、例え、怖くてたまらない上司の部屋にお邪魔することになるとしても。

訪れた兵長の部屋は、やはりというか、隅々まで掃除が行き届いていて清潔だった。

「座って待ってろ」

そう言って兵長は準備を始めた。
まずは手を洗うところから始めるあたりさすがだと思う。
火にかけたケトルの口からしゅんしゅんと音がする。
その湯をティーポットに注ぐと、良い香りのする湯気がふわりとたちのぼった。

そして、お待ちかねの焼き菓子だ。
なんと、プレーンとチョコ味の二種類ある。

「うわあ…!」

凄い、と目をキラキラさせて眺めていると、早く食えと促された。

「頂きます!」

恐る恐る手に取り、口に運ぶ。
美味しい。信じられないくらい美味しい。
涙が出そうだ。

「飲め」

「はい!」

ちょっと猫舌なのでふうふうとよく吹き冷ましてから紅茶を口に含んだ。
兵長の視線を感じる。
紅茶を飲んで目を向けると、無表情のまま兵長がじっと見つめていた。
思い出したようにじわりと恐怖が這い上がってきて、ごくりと紅茶を飲み込む。

「うまいか」

「は、はい」

「そうか」

「でも、どうして」

「今日はお前の誕生日だろう」

驚いた。
確かに部下のことをよくご存知な方だけど、まさか誕生日まで把握されているとは。

「じゃあ…もしかして、これはお祝い…ですか?」

「ああ」

「す、すみません!有難うございます!」

「それと、餌付けだ」

「え、餌付け!?」

気がつくと、いつの間にか両手首を兵長に握られていた。
兵長が身を乗り出すようにして近づいてくる。

「っ!」

ずずい、と来られて咄嗟に顔をそむけてしまった。

「逃げるな」

「へいちょ…」

「今度避けたら削ぐ」

ひええっと震えあがった私に再び顔を寄せてくる兵長。
近付く唇。
逃げられない私は目を閉じることしか出来なかった。

「甘い、な。砂糖のせいか?それとも」

「ふ、え…」

「おい、泣くんじゃねえ。もう一度だ」

そうして何もかもを奪い尽くされた後。
兵長の腕の中で囁かれた言葉は甘く、静かに私の胸に染み込んでいったのだった。

「お前が生まれてきたことに……お前が今日まで生きてくれたことに心から感謝する、ナナミ」


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