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※昼下がりの内地妻の続き


エレン達、調査兵団特別作戦班「通称リヴァイ班」が、旧調査兵団本部である古城に滞在しはじめて二週間が経った。

初めこそ荒れ果てていてとても人が住めそうに無かったが、リヴァイの指揮で徹底清掃が行われているため、大分住み心地が向上してきている。

土埃は徹底的に掃き出され、壁や床は水拭きと空拭きを交互に繰り返す事で磨き上げられ、椅子やテーブルなども同様に清掃が行われているため、古さばかりはもうどうにもならないが、かなり清潔感が出てきた。

町や川から離れている不便さを除けば、そう悪くない環境かもしれない、と庭の掃き掃除をしながらエレンは思った。
特に今の自分にとっては。

未だに地下の部屋で寝起きしているが、初めの頃感じていた閉塞感は大分薄れてきていた。
リヴァイ班の仲間達と打ち解けてきたことも大きな理由だろう。

ふと、後ろから足音が聞こえ、箒を片手に振り返ったエレンは一瞬我が目を疑った。

「こんにちは」

そこには荷物を抱えた女性が立っていたのだ。
女性、と言ってもエレンとそう変わりない年齢に見える。

「もしかして、あなたがエレン・イェーガー?」

「は、はい、そうです」

兵団の服装ではない。
普通の女性用の服の上から外套を纏った彼女の正体をはかりかねながら、エレンは一応丁寧に対応した。
それとも何者なのか問いただすべきなのだろうか。

「ナナミ」

困惑するエレンの後ろからリヴァイの声が聞こえた。
城の廻廊からこちらに歩いて来る。
その眉間に皺が刻まれているのを見て、エレンは反射的に身体を強ばらせた。

「一人で来たのか」

「うん、来ちゃった」

「来ちゃったじゃねぇ。言えば誰かを迎えにやると言っておいただろうが」

「ごめんなさい。早く会いたくて」

「…今回は許してやる。次はちゃんと連絡しろ」

「はい」

女性から荷物を奪いとったリヴァイは、呆然としているエレンを見遣った。

「何を見てる」

「え、あ、あの、どなたなんだろうか、と…」

「妻だ」

「つ………えええええっ!?」

エレンは改めてナナミと呼ばれた女性を見た。
やはり自分と同じくらいの年齢に見える。

「俺に妻がいたらおかしいか」

「いえっ、そういう意味ではっ…!」

「歳が離れてるからびっくりしたんでしょう。ね?」

「は、はい…」

エレンは素直に頷いた。
が、リヴァイに睨まれて青ざめた。

「エレンくんは何歳?」

「15歳です」

「じゃあ、私のほうが少しだけお姉さんね」

優しく微笑むナナミの後ろで、リヴァイは無言だった。
罵声を浴びせられるより尚更恐ろしい。

「パイを焼いて来たの。皆で食べてね」

「ああ」

「着替えも持って来たから。スカーフも洗い替えがいるでしょ?」

「ああ。今日はハンジが来る事になっている。帰りは奴に送って貰え」

「はい」

リヴァイは荷物を片手に持ち、もう片手でナナミの腰を引き寄せた。

「エレン」

「は、はいっ!」

「もう掃除は終わったのか?」

「ま、まだです!」

「食事の時間までには終わらせろよ」

「はいっ!」

妻を城内にエスコートしていくリヴァイの後ろで、エレンは超高速で掃き掃除を始めた。



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