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「先生、たくさん召し上がって下さいね」

上機嫌な母がリヴァイに昼食を勧める。
真鯛の塩焼きも、あさりの酒蒸しも、蒟蒻とほうれん草の白和えも、全部ナナミが作ったものだ。

「うまいな。これならいい嫁になれる」

「まあ、ありがとうございます先生。ほら、ナナミももっと嬉しそうな顔しなさい」

それは無理な話というものだ。
ナナミは俯いてもごもごとお礼を言った。
リヴァイが超見てくる。
怖い。

「先生、明日はお仕事お休みなら今日はこのまま泊まっていって下さい」

「ありがとうございます。ではお言葉に甘えて…」

リヴァイが超見てくる。
怖い。
ナナミが怯えているのには理由がある。
見てしまったのだ。
リヴァイのパソコンに、『今夜、先生に抱かれます……家庭教師淫欲のレッスン』という同人ゲームが入っていたのを。

でもいくらリヴァイでも、母がいるのに何かしたりはしないだろう。
そう思ってひそかに安心していると、

「あら、電話。先生ちょっと失礼しますね」

母がリビングに向かう。
少しして電話の音が止み、母が話している声が微かに聞こえてきた。

「えっ、そうなの?わかったわ、じゃあ支度してすぐ行くから」

…何となく嫌な予感がする。
リヴァイは声が聞こえてくる方向を黙って見ていた。
ぱたぱたとスリッパの音をさせて母が戻ってくる。

「ごめんなさい、先生。主人が出張先で怪我をしたらしくて、今から支度して行かないといけなくなってしまったんです」

「お嬢さんのことならご心配なく」

「まあ…ありがとうございます。ナナミをお願いしますね、先生」

「任せて下さい」

「ま、待ってお母さん!」

「なあに?お留守番出来るでしょ?先生に迷惑かけちゃダメよ」

「食べられちゃう!」

「そうね、夕食の支度もお願いね。先生にもちゃんとご馳走するのよ」

てきぱきと着替えなどを用意して、母は「じゃあ行ってきます」と出て行ってしまった。
パタン、と無情にもドアが閉まる。

急に家の中が静まりかえった気がして背筋がぞわっとした。
寒気を感じて自分の腕で自分を抱きしめるようにすると、後ろから伸びてきた二本の腕に抱きしめられる。
耳元でクッと笑う声が聞こえて肌が粟だった。

「二人きりだな…ナナミ」


「お…おかーさーん!!おかーさーん!!」


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