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※現代


高校三年生の夏と言えば、大学受験に向けての大切な時期だ。
プールや夏祭りといった誘惑を振り切り、ナナミは勉強に身を入れることにした。
快楽は一瞬、後悔は一生。
そんなナナミに、母が家庭教師をつけてくれた。

「よろしくお願いします、先生」

飲み物を置いて退室した母がドアを閉めれば、部屋にはその男と二人きりになった。
何でもとても優秀な人で、彼いわく“躾”という名のスパルタ教育によって何人もの生徒を有名大学に送り出したのだとか。

男の名はリヴァイといった。

目付きや顔つきからちょっと神経質そうな印象を受けたが、ナナミとしては成績さえ上がればいいわけで、多少のスパルタは覚悟の上だ。

「お前は何故大学へ行きたい」

キタ、と思った。
面接でも聞かれる確率の高い基本的な質問だ。

「正直に言って、将来苦労しないためです」

ナナミは素直な気持ちを伝えることにした。

「しっかり勉強して、いい大学に入って、大学でしっかり勉強して、一流でなくても優良な企業に就職して、安定した生活基盤を築きたいと思っています」

「なるほどな」

リヴァイは薄く笑んで静かに頷いた。

ナナミには夢がない。
いや、あるにはあるが、それは「〇〇になりたい」といった具体的な職業を志すものではないのだ。
幸せになりたい。
平和に暮らしたい。
幼い頃から不思議と強いそんな気持ちがナナミを突き動かしてきた。
友達などには、前世でよっぽど怖い目に遭ったんだねと妙な心配までされてしまった。

ギ、と椅子を軋ませて脚を組んだリヴァイがナナミに向き直る。

「いいか。大学なんてのは畜舎も同然だ。ガキから卒業して一人前の男になったと勘違いしてやがる豚野郎どもが、講義なんぞは適当に受け流して遊び惚けてる、どうしようもない場所だ」

「え、えええ…そんな、真面目に勉強してる人だってたくさんいますよ!」

「フン、どうだかな。少なくとも野郎どもがクソだという事実は変わりねぇ」

リヴァイは鼻で笑って断言した。

「お前みたいなのが大学に行ったら、盛りのついた犬みてぇなクソ野郎どもに群がられて、あっという間に食われちまうのが関の山だ」

「そ、そんな…」

「だから、ナナミよ。お前は大学なんざ行かず、俺に孕まされて大人しく専業主婦になればいいんだよ。わかったか。わかったな。よし、服を脱げ。今すぐだ」

「お…おかーさーん!!おかーさーん!!」

「無駄だ。さっき近所のスーパーに買い物に行った。三十分は戻って来ねぇよ。それだけあれば充分だろ。なぁ?」

「いやーーーーーっっ!!」

「安心しろ。お前は俺が幸せにしてやる。将来安泰だぞ。良かったな」

「いやーーーーーっっ!!」

「そうか、そうか、そんなに嬉しいか。俺もだ」

「お…おかーさーん!!おかーさーん!!」


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