ベッドを共にしている女がいる──というと些か語弊がある。 端的に事実を述べるのであれば、ルルーシュにとってC.C.は単なる『居候』だった。 艶めいた関係ではまったくない。 極めて不本意ではあるが、仕方なく自室に匿ってやっている共犯者である。 ベッドだって、最初はこの女が我が物で占領していた為に、部屋の主であるはずのルルーシュはその間ソファで寝起きしていたくらいだ。 そのベッドの上で、下着姿でC.C.が寝そべっているのを目にしたルルーシュは、不快そうに眉をひそめて顔を背けた。 「お前には女としての慎みや羞じらいというものがないのか」 「ほう、お前が私を女として見る気があったとは驚きだな」 「黙れ魔女。あくまで生物学上『雌』であると認めているだけだ。誰が異性として意識するものか」 C.C.はつまらなそうにふんと鼻で笑うと、なまめかしい仕草で身体を反転させた。 わざと聴覚を刺激する思惑が透けて見えるやり方で。 しかし、シーツが擦れる音にもルルーシュの横顔はぴくりとも反応しない。 真っ白な脚をベッドの縁から降ろしたC.C.は、挑発的な微笑を引っ込めて呆れ顔になった。 「それはそれで困ったものだぞ、ルルーシュ。そんな風に朴念仁では、お前に色目を使う女どもの神経を逆撫ですることになるだろう。後ろから刺されないよう精々気をつけろ」 今度はルルーシュが鼻で笑う番だった。 両のアメジストが冷ややかに細められる。 凶悪な、だとか、冷徹なと称するに相応しい表情が、その美貌を飾っている。 「生憎、その程度の女を相手にしている余裕はない。殺意を抱こうが何をしようが俺の知ったことではないさ。命を狙ってくるのならば返り討ちにするまでだ」 「そうとも限らないぞ。身近にいる女が、ある日突然嫉妬に狂って豹変することもあるからな。カレンがそうなったらどうする?」 「カレンは俺の部下だ」 「馬鹿め。思慕の情とは、深ければ深いほど、それが裏切られた時により強い憎悪に変わるものだ」 これだから童貞坊やは困る。 呟いたC.C.を、ルルーシュは横目で睨んだ。 「何が言いたい」 「さて。ああ、そういえばなまえがお前を探していたぞ」 「なまえが? そういう事は早く言え!」 さっと踵を返して部屋を出て行ったルルーシュを見送り、C.C.は、ふふ、と笑みを漏らした。 「まだまだ甘いな、坊や」 |