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中華連邦の天子とブリタニアの第一皇子との間で交わされることとなった婚儀の祝宴の席で、世紀の対決とも呼ぶべき一騎討ちが行われていた。
ブリタニアの宰相を務める第二皇子シュナイゼルと、黒の騎士団総帥ゼロによるチェス対決である。

ゼロが勝てば、枢木スザクの身柄を皇神楽耶へ献上することとなり、シュナイゼルが勝てば、ゼロは素顔を晒さなければならない。

一体ゼロは何を企んでいるのかと警戒していた招待客達も、息詰まる接戦を繰り広げる二人の姿を見守るうちに、いつしか誰もが夢中になり、視線が釘付けとなっていた。

ブリタニア側も、中華連邦の人間も、そして今宵の宴の主役であるはずのオデュッセウス達でさえ、勝負の行方を固唾を飲んで見守っている。

盤上のやり取りだけを見れば、両者の実力は恐らく互角。
決定打が打てぬ間に、意地の張り合いだけが続いていき、このままでは引き分けになるかと思われた時、シュナイゼルが白のキングでチェックをかける事で、互いのキングが向き合う形となった。
チェスではあり得ない手──明らかな挑発だ。

しかし、絶好の機会とも呼べるチャンスだったにも関わらず、『与えられる勝ち』を甘受することは屈服と同じと受け取ったゼロは、自ら黒のキングを引いて退いた。

ゼロの真意を理解出来ない周囲から困惑のざわめきが沸き起こる中、シュナイゼルだけが、ひとり納得したような表情で微笑んでいた。

「皇帝陛下なら迷わず取っていたな。君がどういう人間か、少し分かった気がするよ」

これからどうなるのだろうと、客達の視線が二人に集中する。
だから、その異変に最初に気が付いたのはなまえだった。



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