要は外国に来たと思えばいいのだ。 異世界のもうひとつの日本と考えるから混乱するのである。 このブリタニアという国は、なまえの世界で言うところの英国に似た文化を有しているらしかった。 言語もイングリッシュで、料理も何となくそっち系統とくれば、意外なくらいあっさりとそれらを受け入れられた。 そうなると、小さな問題の解決策も見えてくるものである。 「電圧?」 「そう。簡単に言うと電気の種類だね」 カタカタとキーボードを叩きながらロイドが言う。 のんびりとした口調とは裏腹に、画面には凄まじい速さで数字や記号の羅列が次々と現れてはスクロールしていく。 見ているだけで目が疲れそうになり、なまえは視線をロイドに戻した。 「電圧が違えば、当然電気機器は使えない。調べてみたんだけど、君が持ってた向こうの世界の携帯電話は、大体AC100Vってところだった。こっちとは倍くらい違うし、プラグの形なんかも独特だから使えないんだよ」 相変わらず画面から目を離さないままロイドが続ける。 この作業が自分の為にしてくれているのがわかっているので、なまえは大人しく彼の説明に耳を傾けていた。 普段使っていた電気機器の細かい単位がどれくらいなのかなんて今まで考えた事も無かったが、彼がそういうならそうなのだろう。 この人は変人だけど、こういった事に関しては天才だ。 「だったら、変圧器で電圧を変えてしまえばいい。そうすれば充電は可能になるからね。通話やメールはさすがに無理だけど、他のツールは使えるようになるよ」 「本当ですか!?」 「うん。周波数なんかの問題もあるけど、ま、それはなんとかなるでしょ」 ロイドの言葉通り、その小一時間後には、なまえの携帯はしっかり充電出来ていた。 幸いというか何というか、もしもの時の為にと携帯の充電器を鞄に入れていたのである。 これは使えるだろうかとロイドに尋ねてみたところ、根っからの研究者である彼は驚くぐらい興味を示して、あっという間に専用の変圧器を作ってしまったのだった。 |