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悲鳴。悲鳴。

そして沈黙。


悪夢のような時間が過ぎ去った後に残ったものは、耳鳴りがしそうな静寂と、辺りに漂う濃密な血臭だけだった。
その静寂をコツコツと響く足音が破る。
目隠しをされ、手足を拘束されているなまえは、新たにその場に訪れた何者かの気配に対し、ただ息をひそめて様子を伺うしかない。

「可哀想に…随分酷いことをするね」

…しゅるり。
布が滑る音がして目隠しの布が解かれる。
数時間ぶりに解放された視界に映る、長い金髪と白い肌。
僧衣を思わせる奇妙な衣装。
見えたのは、まだあどけなさの残る少年だった。

見覚えのない人物だ。
姿も声も年相応に幼いものだったが、その身に纏う雰囲気が彼を外見の年齢よりもずっと大人びて見せていた。

「はじめまして──いや、少し違うかな。君は覚えていないかもしれないけど、僕達は以前にも会っているから」

少年はくすりと笑った。

「そんなに警戒しなくても大丈夫だよ。僕は君の敵じゃない。まだ今のところはね」

少年の細い指先が動くたび、身体の拘束が解かれていく。

「それより、彼に会いたいんだろう?」

「彼……?」

「そう、君の大切な皇子様。前回も本当は君は彼のところに行くはずだったんだ。でも、僕が座標をずらしたせいで、余計な遠回りをすることになってしまった──お陰で予想以上に楽しい事態になったけれどね」

赤とも紫ともつかない、ロゼワインに似た色の瞳を細めて、少年はなまえの頬を撫でた。
白い繊手は子供らしい柔らかさで、触れてくる感触も優しい。

「君は本当に面白い子だよ、なまえ。僕の想像以上に楽しませてくれる。お礼に君の望みを叶えてあげよう」


 会わせてあげるよ
  ルルーシュに


瞬間、ぐにゃりと景色が歪んだ気がした。

目の前に広がるのは暗闇。

黒く塗り潰されたその中を、なまえは真っ逆さまに墜ちていった。



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