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血と硝煙の匂いが鼻をつく。

サザーランドの足下には機密情報局員の死体が無造作に転がっていた。
その向こうには部下達の死体も見える。
記憶とともに取り戻したギアスの力を行使したルルーシュによって自害させられた者達の死体だ。
しかし、それさえも、彼ら軍人が行った虐殺の犠牲者達のむごたらしい遺体に比べれば、まだましな状態であるともいえた。
辺りに広がる光景は凄惨極まりないものだったからだ。

「ル…ルルーシュ……」

「落ち着け、なまえ。大丈夫だ。俺がいる」

ルルーシュはなまえの身体を抱き締めた。
そうして振り返る。
紅く染まった左目が見据える先には、華奢な身体の胸元を血で染めた少女が立っていた。
冴え冴えとした怜悧な眼差しがルルーシュとなまえに注がれている。

「C.C.、なまえは」

「お前と同じだ。記憶を操作されている」

C.C.の簡潔な返答に、ルルーシュは忌々しげに眉間に皺を寄せた。
彼の場合はC.C.との接触により皇帝にかけられたギアスを打ち破ることが出来た。
恐らくはC.C.と交わした契約が関係しているのだろう。

しかしなまえはそうはいかない。
記憶を取り戻すことの是非はともかく、こんな状態で放っておくことなどルルーシュには出来なかった。
腕の中で震えているなまえを逃さぬよう抱きしめたまま、ルルーシュは唯一解決方法を知っている可能性のある人物に問いかける。

「どうすればいい」

「お姫様にかけられた呪いは皇子のキスで解けるものと決まっているだろう」

無色透明の声に僅かなからかいを滲ませてC.C.は軽く肩を竦めてみせた。
ルルーシュは怒りとも呆れともつかない眼差しを魔女に向け、それからこの場にいるもう一人の少女へと視線を落とす。



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