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降り注ぐ熱い湯が肌を叩き、なめらかな身体のラインに添って滑り落ちていく。
髪と身体を洗い終えたなまえは、ふうと息をついた。

広いシャワースペースの床部にある排水溝に渦を巻いて流れ込む水を眺めていた目を上げ、ふと辺りを見回してから、しまったと後悔する。
着替えを外に置いたままだ。
このクラブハウスの浴室は、入口から入ったところが脱衣所を兼ねた洗面スペースになっており、その奥にシャワーブースがあるのだが、やはり洗面所は共同の場であることから、なまえはタオルと着替えをシャワーブースに持ち込むようにしていたのである。
まだ慣れていないせいか、今日はうっかり脱衣所に置き忘れてしまったようだ。

カーテンを開いて外を確認し、濡れた身体のままシャワーブースから出る。
後で床も拭かないと、と思いながら、タオルを手にしたその時、

「なまえ、いるか?」

突然ドアが開いた。

「きゃっ…!」

小さく悲鳴をあげて、なまえはタオルを胸に掻き抱きながらその場にうずくまった。
ルルーシュの紫の双眸が見開かれ、ぱっと顔を背ける。
透き通るほど白い肌が赤く染まっていた。

「す、すまないっ!」

「う…ううん…私もちゃんとしてなかったから」

そう答えるも、顔が上げられない。
見られてしまった…。
全裸に近い姿を見られた事への衝撃から、じわりと涙が滲む。
見てしまった…。
ルルーシュもかつてないほど動揺していた。

「ふむ。やはり相手がなまえだと反応が全然違うな」

抑揚に乏しい可憐な声が背後から響く。
入口に小柄な影。
C.C.が立っていた。
人の悪い笑みを浮かべたその顔を、ルルーシュはギリリと睨みつける。

「C.C.…貴様、わざと……ッ!」

「心配するな、なまえ。ルルーシュはちゃんと責任をとってくれるそうだぞ」

「そういう問題ではない! いや、勿論責任はとるが、お前が言う事ではないだろう!」

なまえを直視しないよう気をつけながら、ルルーシュは自分の上着を脱いでなまえに着せかけてやった。
湿った柔らかい肌を指が掠め、ぴくりと反応すると同時に、いっそう眼差しをきつくしてC.C.を睨みつける。

「感謝されてもいいくらいだと思うが……童貞坊やには刺激が強すぎたか──まあいい。巧くやれ、ルルーシュ」

ひらひらと手を振ると、魔女は興味を無くしたように歩き去ってしまった。
この状況を作り出しておいて無責任な!
ルルーシュは怒りを煮え滾らせたが、まずはフォローが先だと判断し、なまえの傍らに跪いて彼女の顔を覗き込んだ。

「なまえ…本当にすまない」

「ううん、もう大丈夫」

なまえが微笑みかける。
タオルと上着で隠された柔らかな肢体に、ルルーシュは、一瞬、目が眩みそうになった。
女だからというわけではない。
それならカレンの際どいヌードの時にも反応していたはずだ。
相手がなまえだから、こんなにも胸が苦おしくなるほどの欲情を感じているのだ。

「ルルーシュ?」

「い…いや…何でもない」

──まだダメだ。
今はダメだ。
この場でなまえに手を出したりすれば、あの魔女の思う壷ではないか。
そうとも。あんな女に御膳立てされなくとも、なまえと自分はいつか必ず自然な形で結ばれるはずなのだ。
焦る必要はない。
その日まで、大切に大切に、想いを育てていけばいい。
そう自分に言い聞かせつつ、ルルーシュは立ち上がった。
こちらを見上げるなまえをじっと見つめて、真摯な表情で甘く囁く。

「愛している、なまえ」

「え? あ、う、うん…」

そして、なまえに背を向けた彼は、本格的に魔女を叱りつける為に、足早に自室へと向かったのだった。



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