「ニーナ、やめて!」 制止の声にシュナイゼルとゼロがそちらに視線を向けた先で、煌めく刃が宙を裂き、床に鮮やかな赤が滴る。 咄嗟にゼロとニーナの間に割って入ったなまえが傷ついた腕を押さえた時には、既にスザクがニーナを取り押さえていた。 「どうして…ッ! どうして止めるの!?」 スザクを振り解こうとしながらニーナが叫ぶ。 悲痛な声に胸が痛んだが、ここで彼女の復讐を許してしまうわけにはいかない。 カレンの背に庇われたゼロは、何故かひどく動揺しているようだった。 仮面で表情は解らないが、狼狽えたようになまえを見つめている。 それほど意外な行動だっただろうかと不思議に思っていると、背後に立った誰かの胸に引き寄せられた。 シュナイゼルだ。 「見せなさい」 傷ついたほうの腕を掴まれ、肌触りの良いシルクのハンカチを傷口に巻かれる。 直ぐ側では、スザクを振りきったニーナが、今度はカレンに向かって声を荒げて抗議していた。 対するカレンは、辛そうな表情で言葉を返している。 ニーナはその場に崩れ落ちるようにして膝をついたかと思うと、激しく泣き出してしまった。 「余興はここまでとしよう、ゼロ。明日の婚礼はご遠慮願いたい。次はチェスなどでは済まないよ」 シュナイゼルが冷ややかな声で告げる。 事実上の退去勧告だ。 騒然としていた場はとりあえずそれで何とかおさまった。 とりあえずは、だが。 あのゼロが、来るなと言われて大人しく引き下がるとは思えない。 明日はきっとまた一波乱あるに違いない。 「おいで。手当てをしよう」 治療をする為にシュナイゼルに支えられて会場を出ていくなまえを、同じく立ち去ろうとしていたゼロが仮面越しに見つめていた。 |