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「有難うございます、ロイドさん!」

「うんうん、お礼はプリンでいいよ〜」

「良かったわね、なまえちゃん」

作業を見守っていたセシルも嬉しそうに声をかける。
独りぼっちで見知らぬ世界に飛ばされて以来、身につけていた鞄の中身だけが、もといた世界となまえを繋ぐ絆となっていたのを、セシルもよくわかっていたからだ。
これで充電の心配は無くなったのだから、好きな時に好きなだけ自分の住んでいた場所の思い出に浸ることが出来るはずである。

「あ、そうだ。せっかくだから写真撮ってもいいですか?」

「ん?僕達を撮るの?」

「はい、記念に是非。もしも向こうに帰れたら、その時は思い出として残りますから」

「なるほどね」

「あ、あら…じゃあお化粧直してきたほうがいい?」

「ええ、セシル君、それ以上どこを直すって?どうせ変わらないんだからいいじゃな──あ"いだだたたた!ごめんなさいごめんなさい」

耳をギュウギュウ捻り上げられているロイドを見て、なまえは困ったように笑った。
この人は本当に無機物相手には素晴らしい才能を発揮するのに、こと人間関係においてはまったくのダメ人間になってしまう。
セシルからの微妙な気持ちを受信出来ているのかどうかも謎だ。
肩をそびやかして怒っているセシルを宥め、まずは一枚。

「そうやってると母娘みた……いや、姉妹みたいだね」

セシルの眉がピクリとしたのを見てとったロイドが慌てて言い直す。

「つ、次はロイドさん、一緒に撮りましょう!」

なまえはロイドの横に立って肩をくっつけるようにして携帯をかざした。

パシャリ。

シャッター音がしたのと同時に、前方のドアが開く。

「随分と楽しそうなことをしているね」
入って来たのはシュナイゼルだった。
後ろに続くカノンの姿も見える。

「わわっ、なまえちゃん、は、早く離れてっ!」

「?」

ロイドに突き離されたなまえはきょとんとする。
心なしか青ざめたロイドは、いつも通り典雅に微笑んでいるシュナイゼルを見て焦っているようだった。

「いつおいでに?」

「ついさっきだよ。所用で近くに来たものだから、ついでに寄って行こうと思ってね。私が来てはまずかったかな」

「いえいえ、まさかぁ〜」

カノンと目が合うと、彼は苦笑めいた笑みを浮かべて微かに肩を竦めてみせた。
どうやら本当に気まぐれによる不意打ちだったらしい。
秒刻みのスケジュールで動いているはずなのだが、シュナイゼルはここにはよく顔を見せに来る。
保護者としてなまえを気にかけてくれていると思えば、有り難い事だった。



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