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閻魔大王の第一補佐官である鬼灯。
その補佐官であるなまえの仕事は、基本デスクワークと雑用だ。

今も山のように積まれた書類の処理に当たっているところだった。

「もうワシ限界。ちょっと休憩しよう、なまえちゃん」

「はい」

うーんと伸びをした閻魔大王に頷き、素直に手を休める。

「アイタタ…こ、腰が…」

「大丈夫ですか?」

「前にギックリやってから、あまり長時間座りっぱなしだと調子悪くてね…」

「マッサージしましょうか?少しは楽になるかもしれません」

「あ、本当に?じゃあお願いしようかな」

「はい、任せて下さい」

なまえが毛布を敷くと、閻魔大王はよっこらせとその上に俯せに横たわった。
なまえは早速腰の辺りを擦り、親指で優しく押していく。

「あー…いいよ…気持ちいい…」

「おや、指圧ですか。私もお手伝いしましょう」

鬼灯は持っていた金棒の先端を閻魔の腰に押し付け、容赦無くぐりぐりと捏ねくり回した。
辺りに絶叫が響き渡る。

「ギャアアア!死ぬ!死ぬから!」

「もう死んでます」

「鬼灯くんの鬼!」

「鬼神ですけど?」

「あああああ!!」

「ほ、鬼灯様…!」

なまえが慌てて止めに入ると、鬼灯は涼しい顔で金棒を閻魔大王の上から退けた。

「鬼灯君、ワシに優しくない…!」

「優しいですよ。前にも治して差し上げたでしょう」

「そうだけど余計なオプションまでついたよ!」

「ちょっと腹を下したぐらいでいつまでもネチネチと…腰は治ったんだからいいじゃないですか」

「よくない!」

二人の言い合いを困った顔で見ていたなまえだが、小さく「あっ」と声を漏らして目に手をやった。

「どうしました?」

「目にゴミが入っちゃったみたいです…いたた…」

「ああ、擦ってはダメですよ。どれ、見せてみなさい」

顎に手を添えられ顔を上向かせられる。
痛みのせいか、それとも異物を除去しようとして涙腺が機能したためか、なまえの瞳にはうっすら涙の膜が張っていた。
けれどもまだ眼の中に入り込んだゴミを外に押し流すまでには至っていない。

「あ、あの…」

「そのままじっとしていて下さい」

鬼灯の端正な顔がすいっと近づいてきてなまえは赤くなった。
近いなんてものじゃない。
吐息がかかり、どきんどきんと胸が高鳴る。

「こうすれば早い」

囁いた鬼灯の唇が開き、そこから現れた舌がねろりとなまえの目玉を舐めた。

「っ…!!!」

「ふむ…とれたようですね」

何事も無かったかのように鬼灯が離れる。
なまえは固まったまま動け無かった。

「もう痛くないでしょう?念のため洗い流してきなさい」

「は…はい…」

なまえは逃げるようにその場から駆け出した。

「最初から洗い流せば良かったんじゃ…」

ぽつりと呟く閻魔大王に背を向けて立ったまま、鬼灯はなまえの目玉を舐めた舌で自分の唇を舐めた。

「それじゃつまらないじゃないですか」

「鬼灯君…君ってホントに…」

洗い場では洗面台の縁を握って座り込んだなまえが声もなく悶絶していた。


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