清楚な黒いパフスリーブのワンピースに、純白のエプロン。と、黒タイツ。 そして、エプロンと同色のフリルカチューシャ。 「鬼灯様…これは…」 「メイド服です」 見ればわかります、とは言えなかった。 衝撃が大き過ぎて。 私の前に広げて並べられたそれを前に、鬼灯様が淡々と説明して下さる。 「EU土産ですよ。向こうの屋敷で働いているメイドと同じものを頂いて来ました」 「有難う、ございます…」 土産なのだから一応お礼は言わなければならないだろう。 礼の言葉を口にすると、鬼灯様は軽く頷いてみせた。 「気に入って頂けたようで何よりです。早速着てみて下さい」 「い、今からですか!?」 「ええ。ここで待っていますから」 部屋で着替えて来いという意味だ。 私は広げられていたメイド服を抱えると、閻魔殿の自室に駆け込んだ。 鬼灯様をお待たせするわけにはいかない。 例えそれがいまいち納得いかない理由であってもだ。 私はせっせと着替えて、すぐに鬼灯様が待っている場所に戻った。 「どう…でしょう?」 「思った通りだ。とてもよくお似合いですよ」 これは喜んでもいいのだろうか。 メイド服が似合うってどうなんだろう。 ただ、私の心の内の困惑や戸惑いに気づいておいでなのかどうか、鬼灯様は小首を傾げて顎に手をあて、珍しくご機嫌良さげなお顔をしていらっしゃるから、これはこれで良いのかもしれない。 「なまえさん。今日は一日、貴女は私のメイドです」 「えっ!?」 「と言っても、さしてやるべき事は変わりませんが。いつも通り、仕事を手伝ってくれればそれで構いません」 「はい、かしこまりました、ご主人様」 どうせならなりきってしまおう。きっとそのほうが楽だ。 私はスカートの裾を軽く摘まみ、膝を折って、西洋風に礼をしてみせた。 「…と思いましたが、気が変わりました」 「えっ!?」 「夜もこのままでいきましょう」 たまにはそういうプレイもイイ。 などと、真顔で仰るものだから私は背筋をゾクゾクと震わせた。 恐怖とちょっぴりの期待で。 |