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不喜処に新たな動物獄卒が増えた日。
不喜処の『三ツ星餌』でやった歓迎会の時の写真が出来上がった。

何回見ても、ニホンザルの柿助をはじめとするサル達が一列に連なってその先頭で柿助に毛繕いされている鬼灯様は、お山の大将に見える。
サルに毛繕いされる鬼灯様萌え。

「髪の毛めちゃくちゃ乱れてるし」

ぷぷ、と思わず笑ってしまう。
そこを後ろからひょいと覗き込まれた。

「何を笑ってるんです」

「わわ、鬼灯様っ」

「ああ、歓迎会の時の写真ですか」

写真を見て納得したらしい鬼灯様が、私にも見せて下さいと仰るので、他の写真も見せて差し上げた。
写真に写っているのは新しい獄卒となったサル達だ。
それらを見る鬼灯様のお顔は心なしか優しく見える。
歓迎会の時も手ずから蒸かした芋やら魚やらを与えていたし、髪の毛ぐちゃぐちゃにされても怒らないし、本当に動物がお好きなんだなあ。

そう思ったら、ちょっと悪戯心が芽生えてしまった。

写真に見入っている鬼灯様の髪にそおっと手を伸ばし、撫で梳かす。

鬼灯様が僅かに驚いた様子をみせたので、私は胸を張って言った。

「毛繕いです」

毛繕いは下位のものが上位のものにするのと、親愛の情を表すものとがあるという。
どちらも私には当てはまるものだった。

「そうですか」

鬼灯様はそう仰ったきり、好きにさせてくれている。
いつから貴女はサルになったんです、と嫌味の一つも覚悟していたのだけれど、ごく自然に受け入れられてしまった。

でもこんな機会は滅多にないので、鬼灯様のお髪(ぐし)の感触を堪能する。
艶のある黒髪はサラサラで、指通りが良い。
正直羨ましいです。

「もういいですよ、なまえさん」

「はい」

名残惜しく思いながら手を離すと、鬼灯様の手が私の頭ににゅっと伸びてきた。
その手はそのまま私の髪を優しく撫で梳かした。

「あ、あの…」

「毛繕いですよ」

「ええっ!?でも、」

「じっとしていなさい」

鬼灯様の骨張った大きな手が私の頭の上で動く。
まるで慈しむような繊細な動きで何度も髪を梳いていく。

「は…恥ずかしいです…!」

「我慢しなさい。貴女だって私の髪を好きにしたでしょう。私にもそうする権利がある」

「鬼灯様は恥ずかしがっていらっしゃらなかったじゃあないですか」

「黙れ」

黙らされた。
鬼灯様は飽かず私の髪を撫でている。

それは閻魔大王様が偶然通りがかって、「ちょ、君達なにやってるの!?」とギョッとした様子でつっこんで来られるまで続けられた。

鬼灯様の報復は倍返しなのはよくわかりました。


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