「どうして逃げるんですか、なまえさん」 いつも通り淡々とした鬼灯様の声が聞こえてくる。 「取って食おうとしているだけでしょう」 「だから逃げてるんです!」 閻魔殿の中を全速力で逃げているが、捕まるのは時間の問題だろう。 こんなことなら白澤様の所にいれば良かった。 「今あの男の事を考えましたね。許しませんよ。捕まえたらお仕置きです」 状況が悪化した。 色々な意味で汗が噴き出してくる。 対する鬼灯様は汗一つかいておらず、呼吸も乱れていない。 化け物め、というか、鬼神だった、このひと。 「待ちなさい」 「待てません!」 マズイ。声が微妙にキレ気味になっている。 だからと言って足を止めれば食われてしまうのだから仕方がない。 あっと思った時には遅かった。 足がもつれて倒れそうになったところを、グイと腕を掴まれて助けられる。 そのままの勢いで身体が反転し、鬼灯様の硬い胸板に抱き止められた。 「ひっ!」 「捕まえましたよ」 「鬼灯さ、…んんんッ!」 噛みつくような口付けで唇を塞がれる。 抱きしめられて、深く、深く、口付けられる。 「んー!んー!んー!」 鬼灯様の胸板をどんどん叩くが、離して貰えない。 逃げた罰だとばかりに長いキスに翻弄される。 ようやく解放された時には腰砕けになっていた。 はふ、はふ、と息をつく私を、鬼灯様はご自分の唇を舐めながら見下ろしていた。 依然として私の身体は鬼灯様の腕の中だ。 息が整う間もなくひょいと担ぎ上げられる。 「さて、じっくりお仕置きするとしましょうか。…私の部屋で、たっぷりと」 |