「鬼灯さまって、むっつりスケベですよね」 「程度の差こそあれ、男はみんな助平な生き物ですよ」 「鬼灯さまはただのスケベじゃなくてむっつりです」 「まあ否定はしませんが」 「開き直りおった!」 よくよく考えてみれば、その片鱗は確かに垣間見えていたのだ。 マキちゃんに電話番号を教えてもらった時もそこはかとなく嬉しそうだったし、 リリスさまにくっつかれて粉かけられている時も満更でもなさそうだったし。 幼なじみのお香さんとは何だかんだ言っていい感じだし。 芥子ちゃんや火車さんにまで優しいし。 あ、でもこれは動物愛かもしれない。 全力で拒絶したのは鶴の恩返しの時だけだった気がする。 「何が不満なんです」 「不満というわけじゃ……」 「私が好きなのは貴女だけですとでも言って欲しいのですか」 「ち、違っ」 「私が好きなのは貴女だけですよ」 「めちゃくちゃ棒読み!」 「下着が上下揃ってないところなんて、とても好ましいと思っています」 「何故それを……!」 「ああ、やはりそうなんですね」 「くうっ……!」 「わかりやすいんですよ、貴女は。だからいじめ甲斐がある」 「鬼灯君……それくらいにしておいてあげないと、なまえちゃん泣いちゃうよ?」 「大王さまぁ!」 「よしよし、鬼灯君が怖かったね」 「チッ」 「舌打ち!?」 「甘すぎるんですよ、大王は」 鬼灯さまは、ドン!と金棒を床に叩きつけた。 振動で閻魔大王さまの身体が跳ね上がる。 私は尻餅をついてしまった。 「ピンク」 「ぎゃああああ!見ないで下さい!!!」 慌てて乱れた着物の裾を直したが時既に遅し。 鬼灯さまにバッチリ見られてしまった。 「もうお嫁にいけない……!」 「私がもらうので問題ありません」 「鬼灯君も素直じゃないなぁ……好きな子いじめも程々にしないと、嫌われても知らないよ」 「嫌われようが何だろうが、私のものになれば同じなので問題ありません」 「なまえちゃん逃げて!」 ごめんなさい大王さま。 とても逃げ切れる自信がありません。 「さあ、遊びはこれまでです。仕事に戻りますよ」 鬼灯さまがパンパンと手を叩いて促す。 私と大王さまは渋々仕事に戻った。 鬼灯さまは既に巻物を手に、確認作業を始めている。 そのお顔は先ほどまでセクハラ紛いのことをしていた人物とは思えないほど真剣だ。 「何を見ているんです。さっさと終わらせないと定時で帰れませんよ。そんなに残業がしたいんですか」 「ええー…」 オンとオフの切り替えが極端過ぎます、鬼灯さま。 |