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大階段を上がって8階へ行き、石壁の前で意識を集中しながら三回往復する。
眼を開けると、そこには先程まではなかったはずの扉が現れていた。
意を決して扉をくぐると──

「早かったな、なまえ」

面白がっているようなリドルの声がなまえを迎えた。
彼は、四方の石壁に真紅のカーテンが引かれた部屋の中央にある豪華なソファにゆったりと腰掛けていた。
奇妙な鉢植えを足元に置いて。
なまえは何故だか無性にそれが気になった。

「それ、何?」

「聞きたいのはそんな事じゃないだろう?」

入口で立ち止まったまま鉢植えから目を離せずにいるなまえをリドルが手招く。
素直に近付いてきたなまえの腕を掴んで、彼は自分の隣りに座らせた。
なまえは何とか動揺を押し隠そうとしたが、どうしても頬が熱くなるのは避けられなかった。

「ど…どういう意味?」

「気になっているだろうと言っているんだ。お前が贈った物に対して、僕がどう思っているか──喜んでくれたのかどうか、と」

「…………」

……どうしてこんな人でなしが好きなんだろう。
意地悪だが魅力的な微笑を浮かべているリドルを見て、なまえは改めて自分自身の恋心に疑問を持った。

「まあ、味は悪くなかった。来年も手作りにするつもりならばもう少し頑張って欲しいところだが、一応及第点はくれてやる」

言っていることは酷いが、テーブルの上に置かれた紅茶のカップとヌガーの箱を見れば、彼がちゃんと全部食べてくれるつもりであることがわかる。
もっと素直に誉めてくれたら普通に喜ぶことが出来るのに…と、なまえは思った。

「…来年も欲しい?」

「ああ、来年も貰ってやる」

リドルの整った顔が近付く。
吐息が唇にかかり、答えるように唇を薄く開くと、深く唇が重ねられた。

「良い子だ…」

辛辣なことばかり口にする癖に、こうして与えられる口付けは蕩けるほど甘い。
甘いものは癖になるというのは本当のようだ。
すっかり蕩けきった様子でなまえはリドルの与える甘美な堕落に身を委ねたのだった。
これから自分の身に襲いかかる触手プレイの恐怖など知らずに。



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