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宣言した通り、昼食は私が作った。
と言っても、下準備は安室さんがやってくれたのだが。
お世話になりっぱなしで本当に頭が上がらない。

「美味しかったですよ、ごちそうさまでした」

「ああ、美味かった」

「お口に合って良かったです」

無難に得意料理にしておいて良かったと一安心。

正直、料理の腕は人並みだと思う。
一応得意料理はあるものの、それ以外は特に際立って上手いということはない。
一人暮らしで自炊をしているので、それなりに一通りのことは出来るといった感じだ。

食後のお茶も私が淹れさせてもらった。
赤井さんにはコーヒー。
安室さんには紅茶。

「そろそろ教えてくれないか」

紅茶にミルクを入れている安室さんに向かって赤井さんが言った。

「君はもうわかっているんだろう?どうすればこの部屋から出られるのかを」

危うく自分の飲み物をひっくり返すところだった。

「えっ、どういうことですか?」

思わず赤井さんの顔を見ると、彼は穏やかだが真剣な顔つきで安室さんを見据えていた。

「俺達が知らない何かを安室くんは知っているということだ」

そんな馬鹿な。
私達は何もわからないままここに閉じ込められているという同じ条件下での仲間ではなかったのか。

「安室さん、何かご存知なんですか?」

「それは……」

「話してくれ。お互い、いつまでもここにいるわけにはいかないだろう」

そうだ。
トリプルフェイスで忙しい安室さんなんて特にそうだろう。
あまり長い間連絡がつかずにいると組織も公安も面倒なことになるのではないだろうか。
組織にいたっては、黙って行方をくらませた裏切り者と判断されてしまうかもしれない。
それは非常に危険なことだ。

「安室さん、お願いします。何かわかっているなら教えて下さい」

私は安室さんの手をとって懇願した。
その手がぴくりと反応する。
安室さんは何故だか苦しそうな表情で私を見た。

「なまえさん…」

「彼女に関係していることなのだろう?それでなければ君が黙ってこの状況に甘んじているはずがない」

私が関係していること?

「それなら尚更です。私に気を遣わずに、どうか教えて下さい。お願いします」

「…………」

安室さんは暫く沈黙した後、渋々といった風にポケットから何かを取り出した。

招待状のような二つ折りのカードがテーブルの上に置かれる。

すかさず赤井さんがそのカードを取り上げて中身に視線を走らせた。

「……これは」

苦い顔つきになった赤井さんからカードを渡して貰い、私も中身を確認する。

「…えっ!?」

そこには、思いもよらない事柄が書かれていた。


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