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朝食のあと、赤井さんが仮眠をとるというので、安室さんと私はダイニングにとどまって話をしていた。

「安室さんは時間がある時は何をしていますか?」

「そうですね……読書か、身体を鍛えていることが多いでしょうか」

「ボクシングやってるんですよね。トレーニングもやっぱりそんな感じなんですか?」

「基礎からスパーリングまで色々ですよ」

紅茶を淹れ直しましょう、と安室さんが席を立った。

手際よく新しい紅茶を淹れているその姿を眺めながらぼんやり考える。
大学の講義がない時、この時間は何をしていただろう。
掃除をしたり洗濯をしたり、だった気がする。
今は午前中のはずだが、眩しい陽射しが見えないため、時間の感覚が狂ってきているようだ。

「なまえさん、大丈夫ですか?」

「ちょっと混乱しちゃって」

「こんな状況ですから無理もありません。君はしっかりしているほうですよ」

「本当ですか?迷惑をかけているんじゃないかと心配で」

「迷惑なんてとんでもない。君がいなければもっと状況は悪化していたでしょうね」

「安室さん…」

安室さんと赤井さんの確執は知っている。
ここで寝食を共にする内に少しでもその闇が薄れればと思っていたのだが、どうやらそう簡単にはいきそうもない。

「もっと楽しい話をしましょう。なまえさんは休日は何をして過ごしますか?」

「家事をして、のんびりすることが多いです」

「映画を観たりは?」

「そういえばしばらく映画館行ってないですね」

「それなら、ここから出たら一緒に映画を観に行きませんか?」

「喜んで!」

そうして楽しくお喋りするうちにあっという間にお昼近くになった。

「私、赤井さんを起こしてきます」

「僕は昼食の準備を始めますね」

冷蔵庫を開けた安室さんとわかれて、ダイニングを出る。
そっとベッドに歩み寄ると、赤井さんはまだ眠っているようだった。
よく寝てるみたいだから何だか起こすのが申し訳ない。

額に垂れかかった前髪を指で梳き上げると、突然手首を掴まれた。

「赤井さ、…きゃあっ!?」

そのまま引っ張られて布団の中に引きずり込まれてしまう。
たちまち赤井さんの匂いに包み込まれた。
赤井さんの手が、手が…!

「いたずらっ子はどの子かな?」

笑みを含んだ低い声が耳に吹き込まれた。

「やっ、だめっ!くすぐったい…!」

赤井さんにくすぐられて、笑いながら身をよじる。
それでも赤井さんは離してくれなくて。
そうこうしているうちにドアが開く音が。

「何をやっているんですか、あなたは!」


安室さんに怒られた。


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