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ベッドに入る時、一瞬、眠れないのではないかと心配になったのだが、全くの杞憂だった。
自分の部屋のベッドよりもはるかに寝心地の良いベッドに身体を横たえた途端、たちまち睡魔が襲ってきて、翌朝までぐっすり眠ってしまっていたからだ。
隣に安室さんがいるにも関わらず。

翌朝、目が覚めると、部屋の中はまだ暗かった。
いつもの習慣で枕元に置いたはずのスマホを探そうと手をやって、ああ、そういえばここは家ではないのだと思い出す。

安室さんの姿が見えないのは先に起きたからだろう。

窓がないので当たり前なのだが、電気をつけなくては明るくならない。
パネルに触れて電気をつけ、時計を確認すると、いつもより早い時間に目が覚めたようだったので少し安心する。
暗いからといっていつまでも寝たままというのはさすがに恥ずかしい。

まずは身支度を整えようと、クローゼットから適当に着替えを出して洗面所のドアを開けた。

「おはよう」

「お、おはようございます」

びっくりした…。
シャワーを浴びた直後らしく、バスローブ姿の赤井さんと鉢合わせしてしまったのだ。
バスローブ越しにはっきりとわかる鍛え抜かれた肉体と、そこから放たれる熱、そして濡れ髪があまりにもセクシーで、面食らってしまう。

「よく眠れたようだな」

「はい、お陰様で…」

「安室くんならキッチンにいるぞ。朝食の用意をしている」

「あ、じゃあ手伝いに行かないと」

「先に顔を洗うだろう?用意が出来てからでいい」

そう言って、ぽんと私の頭に手を置くと、赤井さんは洗面所から出て行った。

気を遣ってもらってばかりで申し訳ない。

超特急で身支度を整えて洗面所を出る。
キッチンに向かうと、安室さんはもう朝食の用意を終えたところだった。

「すみません!」

「いえ、僕が早く目が覚めてしまったのでついでですよ」

気にしないで下さいと微笑む安室さんが天使に見える。

「昼食は私に任せて下さい」

「それは楽しみだ」

安室さんは笑ってダイニングテーブルの椅子を引いた。

「さあ、どうぞ。なまえさん」

「ありがとうございます」

私が椅子に座るのとほぼ同時にドアが開き、赤井さんが入って来た。

「コーヒーはあるかな?」

「セルフサービスです。と、言いたいところですが、淹れてありますよ」

「すまない」

赤井さんと安室さんがそれぞれ椅子に座り、三人揃っての朝食の時間が始まった。

「安室さん、このサンドイッチもしかして」

「ええ、ポアロで出しているものです」

「やっぱり!私これ大好きなんです」

「知っていますよ。いつも注文してくれているでしょう」

「だって美味しいんですもの」

「確かに美味いな」

「ね、美味しいですよね!」

安室さんは私に微笑むと、表情を真面目なものに変えて赤井さんに顔を向けた。

「ところで、寝ずの番をして何かわかりましたか?」

「いや、特に変わったことはなかった」

「やはりそうですか」

安室さんがそう言った瞬間、ほんの一瞬、赤井さんの瞳が鋭くなった気がした。
でも、瞬きする間にそれは消えてしまい、赤井さんはコーヒーに口をつけた。

「これも美味いな」

「褒めても何も出ませんよ。次からは自分で淹れて下さい」


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