ちゃぷん、と音を立ててお湯を手の平に掬う。 温かい湯は心地よく、身体の緊張を解かしていく。 お風呂にどうぞ、と言ってくれたのは安室さんだった。 食事の後、私達は今後のことについて話し合った。 その結果、いつでも逃げ出せるように準備しつつ、ここで生活するしかないという結論に至ったのだ。 幸い、食料も着替えもあることだし、日常生活を送るのに不自由はないだろう。 とりあえず交代で見張りをすることにし、今日は赤井さんが寝ずの番をかってでてくれたので、安室さんと私は明日以降に備えてしっかり睡眠をとることにした。 安室さんはソファで寝るつもりのようだが、そうはいかない。 ここから出られるまで何日かかるかわからない以上、睡眠はしっかりとるべきだ。 無理矢理にでもベッドで一緒に寝てもらおう。 大きいから二人が寝てもまだ余裕があるから問題ないだろう。 お風呂から上がってバスタオルで身体を拭き、寝間着代わりの柔らかい素材のワンピースに着替えた私は、洗面所の戸棚を開けた。 そこには三人分の歯磨きセットとともに女性用の化粧水や乳液、剃刀やシェービングクリームが入っていた。 至れり尽くせりというわけである。 有りがたく化粧水と乳液を使わせてもらって、髪をドライヤーで乾かしてから洗面所を出た。 「すみません、お先に使わせてもらいました」 「遠慮はいりませんよ。レディファーストは当然のことです」 「ありがとうございます。安室さん、どうぞ」 「では、お言葉に甘えて」 ソファから安室さんが立ち上がる。 「そうだ、なまえさん。テレビはつけないで下さい」 「えっ、あ、はい」 「約束ですよ」 安室さんはそう言って洗面所に向かった。 不思議に思いながらも、安室さんのことだから何か理由があるのだろうと思い直して、キッチンへ。 「ほら、これだろう」 よく冷えたミネラルウォーターのペットボトルを渡されて、頷く。 赤井さんは換気扇の下で煙草を吸っていた。 「…彼は何か隠しているな」 「えっ」 「俺達に話せない理由があるんだろう」 赤井さんはそれっきり黙りこんでしまった。 安室さんが私達に隠していること…。 それはいったいどんな秘密なのだろう。 |