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「どうしたら君を俺のものに出来る?」

中東の民族衣装である純白のカンドゥーラを身に纏ったその男は、なまえの手を取り、熱っぽくかき口説いてくる。

神社に初詣に来ていたなまえに一目惚れしたのだと言って、先ほどからずっとこの調子なのだった。

精悍な顔立ちに、服の上からでもわかる逞しい体躯。腰にクる甘い低音ヴォイス。
加えて、アラブの石油王なのだというから、黙っていても女が寄ってくるだろうに、何故自分を選んだのかその理由がわからない。

確かに、先ほど御参りした際に、良い人と出逢えますようにとお願いしたけれども。

「えっと……英語でお断りしますって、なんて言うんだったっけ」

「Sorry, I can’t make it. だが、お断りしないでくれ」

アラブの石油王は日本語が堪能だった。

赤くなったなまえの頬に手を滑らせて、男が顔を近付けてくる。

「俺は赤井秀一という。父親は日本人だ」

「あ、だから日本語がお上手なんですね」

「ああ。君の名前も教えてくれないか」

「苗字なまえです」

「なまえ、俺と結婚してほしい」

「えっ、あ、あの……」

「生涯を共にするパートナーとして、俺には君が必要だ。君以外考えられない。どうかイエスと言ってくれ」

「そ、そう言われても……」

「どうすれば頷いてくれる。跪いて愛を乞えばいいだろうか」

「や、やめて下さいっ」

本当に跪こうとしたので、なまえは慌てて止めた。

「シュウ様、お時間です」

いつの間にか執事らしき人物が後ろに控えていた。

「すまない、なまえ」

「えっ、きゃあ!?」

赤井は突然なまえを抱き上げると、そのまま神社の入口に止められている黒塗りの高級車に乗り込んだ。
あっという間にドアが閉められ、車が動き出す。

「抗議なら、後で幾らでも聞こう。いまは俺に攫われてくれ」

「ひ、人攫い!!」

「はは、怒った顔も最高にキュートだな」

こうして、なまえはアラブの石油王の妻となったのだった。
二人は末永く幸せに暮らしましたとさ。

めでたし、めでたし。


という、初夢を見たなまえは、初詣の誘いにやって来た沖矢の顔をまともに見られずに困り果てた末、様子を気にした彼に洗いざらい吐かされるはめになったのだった。

めでたし、めでたし。


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