「そうそう、その調子。上手ですよ、なまえさん」 プールの縁に掴まり、安室さんにお腹を支えて貰う形でばた足をする。 安室さんの手が触れているお腹のあたりが熱い。 「つい足首に力が入りがちですが、力を抜いて自然に上にあげるように意識して下さい」 「はい」 教えてもらったことを意識しつつ、脚の付け根から水を押すようにキックする。 「良いですね。ばた足はもう問題ないでしょう」 一度休憩しましょうか、と言われ、プールの底に足をついた。 先に水からあがった安室さんに手を引かれ、ざばっと水から引き上げられる。 すぐにタオルを肩にかけられた。 それにお礼を言って、ふうと息をつく。 「泳ぐのって、練習だけで結構体力使うんですね」 「トレーニングにも使われるくらいですからね、かなり運動量はありますよ」 水も滴るいい男。 そんな言葉が頭に浮かぶほど、水に濡れた半裸の安室さんはセクシーだった。 服の上からはわからなかったが、全身に無駄なく筋肉がついている。 腹筋なんて綺麗に割れてるし。 正直、目のやり場に困る。 貸し切り状態のホテルのプールで午後から始めた“レッスン”も、もう二時間程になるだろうか。 基本の息継ぎからクロールの型、ばた足のやり方まで、手取り足取り教わった。 安室さんはとても優秀なコーチだった。 「今度は実際にクロールで泳いでみましょう。大丈夫、僕がついています」 「はい、お願いします」 いよいよ実践だ。 私は今まで教わった内容を頭に思い浮かべながら水に入った。 「もう少しですよ。頑張って」 クロールで25メートル。 安室さんに励まされながら何とか泳ぎきって、水から顔を上げる。 ぱちぱちと手を叩く音が聞こえた。 「よく頑張りましたね。綺麗なクロールでしたよ」 「ありがとうございます。安室さんのお陰です」 「どういたしまして。練習はこれで終わりです。少し遊びましょう」 「遊ぶ?」 どうやって、と思ったら、安室さんに手を引かれて彼の身体に密着させられた。 「あ、安室さんっ」 「そのまま。力を抜いてじっとして」 私を抱いたまま安室さんが仰向きに泳ぎ出す。 私はというと、暴れるわけにもいかず、安室さんの上で大人しくしているしかない。 他に泳いでいる人がいなくて良かった。 貸し切りだから出来る遊びだ。 安室さんの身体に私の身体が乗っているせいで、私の胸が彼の胸板に押し付けられて潰れている。 脚と脚が触れ合って、安室さんのしなやかなそれが時折力強く動いて水を蹴った。 そうしてしばらく水の中を漂う。 大きな魚にくっつく小魚になった気分だ。 いや、それよりも。 「どうですか?」 「赤ちゃんになった気分です…」 「はは、そうですね。こんなに可愛い赤ちゃんなら是非欲しいですよ」 その場合、僕が父親で君が母親になりますけどね。 そう笑って安室さんはさりげなく私のお尻を鷲掴んだ。 そのままやわやわと揉まれて顔が赤くなる。 「うん、これは、なかなか…」 「安室さん…!」 「フフ、すみません」 安室さんが私の腰を抱いたまま立ち上がる。 濡れた手で髪を掻き上げる仕草が色っぽくてドキッと胸が鳴った。 「今日は疲れたでしょう。お疲れさまでした」 「いえ、楽しかったです。ありがとうございました」 「いや、水泳の後の疲労を甘くみてはいけません」 安室さんが私の腰から背中を撫で上げる。 愛撫のようなそれに背筋がゾクゾクする。 「実は、部屋をとってあるんです。ゆっくり休んでいきませんか?」 そう言って安室さんはにっこり微笑んだが、その無邪気な笑顔に騙されてはいけないと思った。 「ね、いいでしょう?」 笑顔で迫って来る安室さんの手が腰からお尻に滑り降りる。 ぴっちりとした水着の隙間から手が侵入して来て、びくりと身体が震えた。 私のお尻を直に撫でた手は、そのまま前へと指を進めて、水の中にいたために冷えていた入口を指先がそっと撫でる。 「あ、安室さんっ…」 思わず安室さんの腕を掴んだ私に、彼は顔を近づけて耳元で甘く囁いた。 「僕はマッサージも得意なんです。優しくしますから……ね?」 まな板の鯉とはこのことか。 |