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「す…昴さん…!」

「よしよし、大丈夫ですよ」

昴さんにぴったりくっついて震える私の背中を、昴さんが優しく撫でてくれる。
それでも怖いものは怖いので、テレビ画面の中で登場人物が残虐な殺され方をしたり、ヒロインが悲鳴をあげるたびに、私はびくっと身体を震わせて昴さんに縋りついていた。

どうしてこんなことになっているのか。

今日は昴さんに誘われて、工藤邸でおうちデートをすることになっていた。
車で迎えに来てくれた昴さんと一緒に、まずは彼の手料理だというシチューでお腹を満たしてからリビングに移動し、『前から見たかった映画のブルーレイ』を用意してくれているというので、それを観ることに。

ところが、昴さんが用意していた映画は私が考えていたものと違っていた。
てっきり見たかったミステリー映画だと思っていたのに、実際は、「これ面白そうだけど怖そうですね」と私が前に話したことのあるサスペンス・ホラーだったのである。

「こ、これ…」

「面白そうだと言っていたでしょう?」

にこやかに言った昴さんは、明らかにわかっていてやっていた。
だからといって、ぷるぷる震える私に手を差し伸べて、膝の上をぽんぽんと叩いてみせた彼に逆らえるはずもなく。
こうして昴さんの膝に抱っこされながら恐怖におののきつつ映画を観ているというわけだ。

「なまえさん、今夜一人で大丈夫ですか?」

「え?」

「ベッドの下に殺人鬼が隠れているかもしれませんよ」

「ど…どうしてそんな怖いこと言うんですか!昴さんの意地悪っ」

「近頃は物騒ですからね」

前からうっすらそんな気はしていたけど、この人ドSだ。
笑顔から隠しきれないSっ気が滲み出ている。

「だから、今日は泊まっていきなさい」

「うっ…でも…」

「コナンくんには了解をとってあります」

用意周到さに思わずぽかんとしてしまう。
だが、その時、画面からまた絶叫が聞こえてきて、慌てて昴さんに抱きつく。
ぽんぽんと宥めるように背中を叩かれて安心してしまう自分が情けない。

「ほら、こんな状態で一人で眠れないでしょう。いい子ですから、ね」

「うう…昴さんの…昴さんの…」

「…くく、」

喉で笑うのがセクシーだとか思ってしまった私はもう駄目だ。
この人に駄目にされてしまった。

「責任、とって下さいね」

「もちろん、喜んで」

サスペンス・ホラーがようやく終わったと思ったら、何食わぬ顔をして、私が見たがっていたミステリー映画のブルーレイを出してみせた昴さんは、本当に昴さんだ。

この後、めちゃくちゃセックスした。


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