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台風が過ぎ去った翌日、小学校の時の同窓会に出席した。
卒業以来会っていない子が殆どなので気合いを入れて来たのだが、想像以上に女子のレベルが高くてびっくりしてしまった。

「ユミちゃん凄く綺麗になったね」

「ああ、あの子大学デビューしたんだよね。高校はお堅い進学校だったから眼鏡に三つ編みだったんだけど、大学入ったらコンタクトにして髪もゆるふわ巻きにしてメイクもバッチリで驚いたわ」

「好きな人出来たのかな」

「いやあどうかねぇ。単に女としての自覚が目覚めただけかもよ」

「そういうなまえはどうなの?今付き合ってる人とかいないの?」

「うん、まあ」

「えっ、マジかぁ。どんな人?」

「うーん…内緒」

「こら、大人しく吐きなさい!」

「あはは」

笑ってカクテルを飲んで誤魔化すと、それ以上は追求されなかった。
プールサイドのダイニングバーを貸し切りにして貰っているのだが、涼しげで雰囲気も良い。
今度零さんと来たいな、なんて。
でも忙しい人だからなあ。
組織壊滅後も残党狩りをしたり色々と忙しい恋人を思って溜め息をついた。

「ねえ、田中ずっとなまえのこと見てるよ」

「あ、こっち来る」

「えっ?」

誰だっけ、と思い出そうとしている内に、その彼は私の所に来てしまっていた。

「苗字、久しぶり」

「あ、うん」

背が高くてがっちりした身体つきの、よく日焼けした男子だ。
どうしよう。近くで見ても思い出せない。
友達が、「ほら、サッカー部の…」と助け船を出してくれた。

「今はラグビーやってるんだ」

なるほど。いい身体をしているのはそのせいか。

「覚えてないか?一緒に図書委員やってたんだけど」

「ああ、あの?」

「そう。あの田中だよ」

田中くんは真っ白な歯を見せて笑った。
私が知っている図書委員の男の子は、小柄で細っこい子だったのでまったくわからなかった。

「俺さ、あの頃苗字のこと気になってて、だから同じ図書委員になったんだ」

「そ…そうなんだ…」

「もし良かったら連絡先交換して貰えないかな?」

「えっと」

「ダメダメ。この子、彼氏いるから」

私が断るよりも早く友達がバラしてしまった。

「そっか…じゃあ、友達として、でも駄目かな?」

「それなら…」

「良かった。ありがとう」

お互いに連絡先を交換すると、田中くんは軽く世間話をしてからまた男子の輪に戻って行った。
待ち構えていた男子達に肩を叩かれたり小突かれたりしている。

「そろそろお開きだね」

「電話するから、またみんなで集まろ!」

この数時間でスマホに新しい登録番号がたくさん増えた。
それを嬉しく思っていると、店の入口のほうからウェイターさんに案内されてくる見慣れた美貌が見えて驚く。

「零さん!?」

「迎えに来たよ、なまえ」

「今日お仕事だったんじゃ?」

「終わらせて来た」

グレーのスーツを着た零さんは、この場にいる誰よりもカッコいい。
いかにもデキる男といった感じだ。

「こんばんは。なまえがお世話になっています」

零さんは“安室さん”の時のような完璧な営業スマイルを浮かべてみんなに挨拶をした。

「なまえってば、こんなイケメン捕まえてたなんて知らなかった!」

「今度詳しく話してもらうからね!」

零さんはそんな友人達の言葉を笑顔で聞いていたが、「さあ、帰ろう」と私の腰に腕を回して促した。
色めきたつ周りに見せつけるように顔を近付けて耳元で囁く。

「向こうの集団の中に君を見ている男がいた。ガタイのいいスポーツマンタイプの。彼と何かあっただろう。帰ったらじっくり話を聞かせて貰おうか」

公安のエースこわい。


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