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今日、大好きだった恋人に別れを告げた。

彼のことを嫌いになったり、他の人を好きになったわけではない。
私のキャパシティを越えてしまったのが原因だった。
全ては私が狭量なのが悪いのであって、彼には何の落ち度もない。

忙しい人だし、何より直接顔を合わせて話すのが怖かったこともあり、メールで別れを伝えたあと、アドレスを変えた。
合鍵を渡してあったので、ついでに勢いで家の鍵も変えてしまった。

それなのに。

「どうして零さんがうちにいるの!?」

「合鍵を差し込もうとしたら鍵が変えられていたから、ピッキングで開けた」

「お巡りさん!」

「俺も警察官だけど」

「風見さん!」

「風見には俺の意思を伝えてある。頑張って下さいと言われたよ」

それ犯罪教唆にならないの?
そもそも公安の零さんがこんなことしていいの?

私は混乱しながらも、零さんと距離をとりつつ改めて宣言した。

「メール見たでしょう?私達、もう別れたんだよ、零さん」

「あんな内容じゃ納得出来ない」

「もう梓さんやベルモットや名前も知らない女子高生達に嫉妬するのは嫌なの!」

「俺は嬉しいよ。嫉妬するくらい俺のことを好きでいてくれて」

「私は嫌なの!」

零さんの周りにいる女性に嫉妬するたび、まるで自分が物凄く醜い生き物になってしまったようで、ひどい罪悪感に苛まれるのだ。

「私が零さんに相応しくなかったというだけだから、お願い。もう別れよう?」

「嫌だ」

一気に距離を詰めてきた零さんに抱きしめられる。

「絶対に別れない」

苦しいほどの抱擁と彼の悲痛な声音が、彼がどれほど苦しんでいるかを伝えてきて私を戸惑わせる。
私は彼に幸せになってほしくて身を退こうとしているのに。

「君がいなければ、俺は幸せになんかなれない。君が必要なんだ」

「そんな…困るよ…」

私だって悩んで悩んで、悩みぬいて出した答えだったのに、そんな風に言われたら決意が揺らいでしまう。

「そうだ、離れているからいけないんだ。俺と一緒に暮らそう、なまえ。それがいい」

「えっ、えっ?」

「側にいて、俺がどれだけ君を愛しているかわかってもらえれば、別れたいなんて思わなくなるはずだから」

そうだ、そうしようと一人納得したように呟く零さんに、背筋がゾッとした。

「零さん、ねえ、落ち着いて」

「俺はこの上なく冷静だよ」

零さんの綺麗な青灰色の瞳がじっと私に注がれる。

「愛してるよ、なまえ」

そこに宿っていたものは、紛れもなく


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