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濡れてなまめかしく輝く褐色の肌。
躍動するしなやかな筋肉。
薄く開いた形の良い唇から漏れ出る熱い吐息。

プールで泳ぐ零さんが美しすぎてどうしよう。

「なまえ、君も早くおいで」

「は、はい」

思わず動画を撮影しようと手に取ったスマホをテーブルに置いて、私はプールの中に入って行った。

零さんに歩み寄ると、手を引かれて引き寄せられる。
零さんが悪戯っぽく笑った。

「撮影はNGだ」

ヤバい。バレていた。

ここは、とある南国にあるリゾートホテル。
小さな島だが、島まるごとホテルの敷地内ということで、様々なアクティビティが楽しめる。
もちろん、私達のようにホテルでまったり過ごしたりも出来て、自由度は高い。

零さんにとっては久しぶりの休暇だ。

黒の組織壊滅後も何かと多忙な零さんだが、以前と違って、ちゃんとまとまったお休みがとれるようになったのが嬉しい。

ホテルに到着した私達はチェックインしてすぐに外には行かず、大きなベッドの上でごろごろして旅の疲れを癒した。

と言っても、実際に疲れていたのは私だけで、普段から鍛えている零さんは全く疲労の色が見えなかったのだが、優しい彼は私の身体を気遣ってくれたのだ。

美味しい食事を食べて元気を取り戻したあとは、混んでいるだろうビーチには行かず、こうしてプールでゆっくりと泳ぐのを楽しんでいる。

「零さん、細いのにしっかり筋肉がついていますよね。私も少し鍛えようかな」

「君は今のままでいいよ。柔らかくて抱き心地がいいから」

「こんな感じに?」

「そう、こんな感じに」

零さんに抱きつくと、ぎゅっと抱きしめられる。
濡れた身体はいつもより体温が低い気がするが、内側にいつもの燃えるような熱が存在しているのがちゃんと感じられる。

「もう少ししたらビーチに行こう。夕焼けが見られるよ」

「わあ、楽しみです!」

その前にもうひと泳ぎしようと、水を蹴って鮮やかに水中へ身体を踊らせた零さんに見とれて声も出ない。

ああ、幸せだなあ。

ビーチに行くと、ちょうど海岸線に夕陽が沈んでいくところだった。
サンセットビーチと名付けられた絵画のような美しい風景に思わず息を飲んだ。

「少し歩こうか」

零さんに手を引かれて波打ち際を歩き始める。

「こういうの夢でした」

「僕もだ。いつかこうして君と波打ち際を散歩してみたいと思っていた」

「零さんもロマンチストなんですね」

「どうかな。僕はリアリストだと思うけど」

「確かに、赤井さんのほうがロマンチストかも」

「そこでその名を出すということは、僕に対抗してポエムのひとつでも言ってみろということかな」

「零さん、頑張って!」

「残念ながらそこまでロマンチストじゃない」

「ちょっと赤井さんに電話してみますね」

「こら」

スマホを取り出すふりをすると、零さんに怒られた。

「せっかく君を独占しているのに、他の男の名前を出すのは無しだ」

「はい、ごめんなさい」

二人で笑いあって波打ち際を歩いていく。

夕陽は完全に沈みきって、夜空にはキラキラと星がまたたいていた。

「赤井の名前を出したこと、今夜ベッドの上で後悔させてあげるよ」

星の光を映して零さんの瞳が輝いている。

どうやら、今夜は相当な覚悟が必要なようだ。


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