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「温泉でクリスマスというのもいいな」

パソコンで何やら調べものをしていた零さんが言った。

「クリスマスの予定。どうかな?」

突然のことに反応出来ずにいる私に視線を向けて、零さんがはにかむように微笑む。
その微笑みプライスレス。

「もちろん、君が嫌だというなら…」

「嫌じゃないです!温泉大賛成です!」

「そうか、良かった」

零さんに手招かれて歩み寄ると、膝の上に抱き上げられた。
まだこの近さで見る美貌に慣れない。
顔を赤くする私に、猫がすり寄るように頬擦りして、零さんは小さく息をついた。

「こんな穏やかな気持ちで迎えるクリスマスは久しぶりだ」

組織壊滅のために奮闘した日々を思い出しているのか、零さんは軽く瞳を伏せてしみじみとした口調で言った。

トリプルフェイスを使い分けて、この国を守るために戦って来た日々。
それはまだ過去と言えるほど遠い日のことではない。
その証拠に、零さんはまだ後始末に駆けずり回っている。
毛嫌いしていたFBIと協力しあって。

私もこんな日が来るのをずっと待ちわびていたからわかる。
今年のクリスマスは、何の心配もなく過ごせるのだから、これは彼にとっては凄いことなのだろう。
言わば、戦士の休息だ。

「今年は温泉でのんびり過ごしましょうね」

「ああ、君と一緒にね」

幸せだ、と零さんの美しい顔に書いてある。
そんな零さんを側で見ることが出来る私は世界一の幸せ者だと思う。

私をぎゅっと抱きしめて、零さんが耳元で囁く。

「子作りも解禁だろう?」

そのまま立ち上がって寝室に運ばれていきながら、私は来年のクリスマスはもしかすると三人で過ごすことになるかもしれないと密かな予感に胸を熱くしていた。


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