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組織を壊滅にまで追い込んだのは、江戸川コナンこと工藤新一の存在あってこそなのは間違いないが、やはりここは我らが公安のエース降谷零とFBIの赤井秀一捜査官、この二人の英雄の功績を讃えたい。

長年の確執から緊張関係にあった彼らが和解し、協力したことが、組織壊滅への近道になったと私は思っている。
風見さんは複雑な心境のようだが、友好国との協力体制が取れたことは素直に喜ぶべきではないだろうか。
公安だけの力で解決出来なかったのは事実なのだから仕方がない。

ジェイムズさんなどは特に両者の交流に積極的で、こちらの上司に働きかけて、若い独身者達を集めた交流会を盛んに行なっている。

今日もその交流会で、FBIと公安の職員達が郊外のキャンプ場に集まってバーベキューを楽しんでいた。

「なまえ」

せっせと肉を焼いていたら、赤井捜査官にトングを取り上げられた。

「代わろう」

「すみません、ありがとうございます」

赤井捜査官は経験があるのか、非常に手際がいい。

「礼はいらんが、良ければまた君の手料理が食べたい」

「さっき焼いたお肉ありますよ?」

「いや、そういう意味ではないんだが…」

「どうした、苗字」

「降谷さん」

降谷さんが私と赤井捜査官の間に割って入った。

「赤井捜査官、うちの部下が何か?」

「いや、何も問題はない。君の部下はすこぶる優秀だ、降谷くん」

「さっき、手料理がどうのと聞こえたんだが」

どうやら降谷さんは私が赤井捜査官に絡まれていると勘違いしているようだ。
誤解を解こうと私は慌てて弁解した。

「以前、赤井捜査官に食事に誘って頂いたお礼に、自宅で作ったものを食べて頂いたんです」

「家に上げたのか」

「えっ、は、はい」

降谷さんは何故かその美貌をしかめて赤井捜査官を睨んだ。

「僕の部下を食うつもりか、赤井秀一」

「君にとって彼女はあくまでただの部下に過ぎない。そうだろう?」

「苗字には特別に目をかけて育てている。将来有望な部下が食い荒らされるのを見過ごせと?」

「素直になったらどうだ、降谷くん。君も彼女を憎からず想っているのではないかな?」

「例えそうだとしてもあなたには関係のないことだ」

えっ、なんだろう、この修羅場っぽい展開は。

私は今にも焦げ付きそうになっている肉を脇に取りのけ、いい具合に焼けていた肉と野菜を一緒に皿に盛り付けて降谷さんに渡した。

「降谷さんも少し休憩して下さい。さっきからずっと調理にかかりきりだったでしょう」

「そうだな…君がそういうのなら」

「なまえ、やはり先ほど君が焼いた肉を貰おう」

「良いですよ。やっぱりお腹がすいていたんですね」

「降谷くん、君の部下はなかなか手強いな」

「僕の苦労をわかって貰えたようで何よりですよ。だが、苗字は渡さない」

「知っているか、降谷くん。なまえは実にチャーミングなんだ。特に自宅にいる時はリラックスしていて、普段とは違う一面が見える。君は彼女の家に入ったことはないのだろう?」

「くっ…赤井秀一ィ…!」

「悪いな、降谷くん。俺のほうが一歩リードしているようだ」

「苗字!」

「は、はいっ」

「今日は僕が送って行こう。君の部屋に寄っても構わないな?」

「え、あの、抜き打ち調査的なものでしょうか」

「違う。個人的な興味だ」

「そういうことなら、俺も立候補させて貰おう。なまえ、俺のマスタングと降谷くんのRX-7、どちらがいい?」

「えっ、そんな、選べませんっ」

「何故、そこで僕を選ぶと即答しないんだ。赤井秀一と僕なら僕を選ぶだろう」

「フッ…自信家なのは結構だが、なまえが困っているぞ。彼女を困らせるのはあまり感心しないな」

「苗字、君は困っているのか?」

「いえ、そんなっ」

「そうだ、僕が君を困らせるはずがない」

またやってるよ、とひそひそ話す声が聞こえてくる。
見れば、他の職員達が遠巻きに私達を見守っていた。
冷や汗をかいた風見さんが口パクで「なんとかしろ」と言っている。

そんなことを言われても困ります、風見さん。
どうにか出来るならとっくに何とかしていますよ。

「誰を見ているんだ、苗字。ちゃんと僕を見ろ」

「俺を嫉妬させたいのか、なまえ?なら成功だ。だからこっちを見てくれ」

「ふ、ふえぇ…!」


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