ラグジュアリーな外資系ホテルのテラス席で、桜を間近に眺めながらのランチ。 ハイソなお花見に最初は戸惑ったが、赤井さんがごく自然な振る舞いでエスコートしてくれたので、次第に身体の硬さもとれてお花見を楽しむ余裕が出てきた。 ホテルの敷地内に植えられた白と薄ピンクの桜の花は五分咲きといったところ。 まだ満開には程遠いけれど、明日の雨で大分散ってしまうだろうから、丁度良いタイミングだったと言える。 「美味しいですね。素敵なお花見に連れて来て下さってありがとうございます」 「そうか。君に喜んで貰えたなら、連れて来た甲斐がある」 赤井さんも満足そうだし、私も嬉しい。 実は、お弁当を作って来ようか迷ったのだが、やめておいて良かった。 赤井さんに手料理を振る舞うのはまた別の機会にしよう。 「気分転換は出来たか?」 「えっ?」 「最近忙しくて随分疲れていたようだったからな。花見は口実で、君を外に連れ出したかった。少しでも気晴らしになればいい、と」 「ごめんなさい。心配をおかけしていたんですね。赤井さんのお陰でもう大丈夫です」 「そうか」 精悍な頬を緩めて優しく微笑んでくれる赤井さんさえいてくれれば、仕事でどんなに大変な時も乗り越えられる気がした。 「代わりと言っては何だが、頼みがある」 「何ですか?」 「来年も、俺と一緒に花見をしてもらえないだろうか」 「もちろん、喜んで。来年はお弁当を作って来ますね」 「ああ。楽しみにしている」 赤井さんが頭を撫でてくれる。 私のほうが楽しみ過ぎて、今から来年のその日を指折り数えてしまいそうだった。 |