上下白のスウェットというラフな格好で、零さんはセロリのスティックを食べながらマウスを操り、キーボードを叩いている。 ぽりぽりと食べ終わると、鉛筆立てに並ぶ鉛筆の如く傍らの器に盛り付けられた色とりどりの野菜スティックの中からまたひとつ摘まみ取り、特製の味噌胡麻ディップにつけて食べるのを繰り返していた。 健康的と言えば健康的だが、物足りなくないのだろうか。 ひたすら野菜スティックを食べ続けるその姿に、うさぎさん…と思ってしまったのは内緒だ。 「俺がうさぎなら、君は雛鳥だよ」 私を膝に抱き上げて零さんが笑う。 どうやらばれてしまったようだ。 この人には本当に隠し事が出来ない。 「ほら、体温が高くてあたたかい」 「それは…零さんが近くにいるから」 「緊張すると体温は下がる。つまり、俺の存在を感じて体温が高くなるということは」 「待って!言わなくていいです!」 慌てて零さんの口を手で塞ぐ。 零さんはおかしそうにクスクス笑って私の手を退かした。 「口を塞ぐなら、もっといい方法があるだろう?」 咄嗟に野菜スティックの器からセロリを取って零さんの口に入れたら、お返しとばかりにニンジンのスティックを口に入れられてしまった。 仕方なくぽりぽり食べたけど、やっぱりうさぎになった気分だ。 「甘いもののほうがいい?」 頷くと、いきなり深く口付けられた。 零さんの舌が口の中を生き物のように這い回る。 上顎の内側を舐められて、ゾクッとした。 「れい、さんっ」 「なまえが甘いものが欲しいって言うから」 確かに、とびきり甘いキスだったけど。 ちょっと恥ずかしい。 「もうこれがないとダメな身体になってるだろ、お前」 その自信はどこからくるのだろう。 認めるのが悔しくて、そっぽを向くと、零さんは笑って、両手で私の頬を包み込んだ。 「愛してる」 どんなスイーツよりも、甘い、甘い、囁き。 これには私も陥落するしかなかった。 |