──疲れた。 いつも水曜日はつらいものだが、連休明けの勤務ということもあり、疲労感は倍増。 家に帰り着く頃にはもう一歩も歩けないくらいぐったりしていた。 着替えてベッドに横になるのも億劫で、そのままソファに倒れ込む。 目を閉じていたらいつの間にか眠ってしまっていた。 はっと目が覚めると、 「起きたか」 聞き慣れた低い美声が上から降ってきて驚く。 「赤井さん…?」 「すまないな。合鍵で上がらせて貰った」 それはもちろん構わない。そのための合鍵だ。 でも、いまのこの状況はどういうことだろう。 私は、ソファに座った赤井さんに膝枕されていた。 「ひ…膝枕…」 「ん?嫌だったか?」 「いえ、でも恥ずかしくて…」 「恋人ならこれくらい普通だろう」 左手で私の頭を撫でながら赤井さんが小さく笑った。 優しい眼差しを注がれているのを感じる。 鼻腔を満たす煙草の匂い。 赤井さんの存在を示すそれらに頭がくらくらするほどの魅力を感じた。 「たまには甘えてくれ」 「赤井さんはこういうベタベタするの苦手なんだと思っていました」 「相手によるな。君は何故か甘やかしたくなる」 髪を撫でる赤井さんの大きな手の感触が気持ちいい。 頬に感じる引き締まった太ももの逞しさだとか温もりだとかが、いつもよりも身近に彼を感じさせて、嬉しいやら恥ずかしいやら。 「だめです…またうとうとしちゃいそうで…」 「そうか」 赤井さんは一つ頷くと、私を抱き上げた。 「もう少しこのままでも良かったが、君に風邪をひかせるわけにはいかないな」 ベッドに降ろされ、赤井さんが添い寝してくれる。 その逞しい身体に抱きついてほっと息をつくと、顔を上げさせられてキスをされた。 「おやすみ、sweety」 「おやすみなさい、ダーリン」 赤井さんの胸板に顔を埋めてクスクス笑えば、らしくなかったかと苦笑している気配が伝わってくる。 そんな少し不器用な優しいあなたが大好きです。 赤井さんの体温を感じながら、私は安心して目を閉じた。 |