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「赤井さん!」

バッグを置いて両腕を広げてみせた赤井さんの胸に飛び込む。
揺らぎもせずに抱きとめられて、思わず、ふふふと笑い声が漏れ出た。
相変わらず、逞しくて頼もしい人。

「ん」

久しぶりの赤井さんの匂いを堪能してから顔を上げると、すぐに唇にキスが降ってくる。
逢えなかった時間を埋めるような情熱的なキス。
空港で再会した恋人と抱き合ってキスなんて、まるでドラマのクライマックスシーンのようだ。

「おっと、これ以上はいかんな」

蕩けてぼうっとしたままの私を見て赤井さんが笑う。
見惚れてしまいそうな、雄としての魅力に溢れた笑み。

「このままベッドに押し倒してしまいたくなる」

喜んで、と言いたいところだけれど、この後は予定があるのだ。

「私もそうされたいですけど、レストラン予約しちゃいましたもんね」

「ああ、後の楽しみにとっておくとしよう」

さらりと言って右肩にバッグを担いだ赤井さんは、左腕を私の腰に回して歩き始めた。

「あれ?赤井さんの車?」

空港の駐車場にはマスタングが停まっていた。

「ああ、キャメルに手配しておいてもらった」

日本に残って残務処理をしているキャメルさんに頼んであったらしい。

車に乗り込み、レストランに向かう。

そこからはまるで夢のような時間だった。

お洒落なレストランで美味しい料理に舌鼓を打ち、お互いの近況を報告しあう。
赤井さんは運転するからお酒は飲めなかったけれど、雰囲気だけで充分に酔えるほどだった。
赤井さんと同じ空間にいるというだけで堪らなく幸せで、他には何もいらないと思えた。

「わあ、綺麗……!」

キラキラと輝く夜景に歓声を上げる。
赤井さんが連れてきてくれたのは、海沿いにある展望台だった。

マスタングに凭れかかって煙草をくゆらせている赤井さんを含めて、これ以上ないロマンチックな景色だ。

「はしゃぐのは構わないが、風邪をひくなよ」

「はい、気をつけます」

赤井さんが自分のジャケットを羽織らせてくれる。

「あったかい……ありがとうございます」

赤井さんの匂いがするジャケットのお陰で、赤井さんに抱き締められているみたいだ。

そう伝えると、赤井さんは吸っていた煙草を携帯用灰皿にしまい、私の腰を抱いて車の助手席へと促した。

「赤井さん?」

「すまないが、もう待てそうにない」

赤井さんがシートを倒してのしかかってくる。

「はい」

私は両腕を広げて彼を受け入れた。

「私を赤井さんのものにして下さい」


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