入学早々バスケ部に入った赤司の話によると、初日からいきなりクラス分けテストが行われたらしい。
体力テストと技術テストの結果で一軍から三軍に振り分けられたのだ。

例え初回で三軍になっても、このテストは定期的に行われるので、それがランクアップの機会となるわけだ。
それを励みに日々努力すればいいわけである。

一軍やスタメンを目指すのならば、提示されるノルマをクリアするだけではなく、自分で実力を磨きつつ、のしあがって行かなければならない。
完全な実力主義。
普通の中学生にはかなりキツいはずのそれに食らいついていけなければ、辞めるしかない。

赤司は淡々と語った後、「そっちはどうだった」と聞いてきた。
七海はバスケ部のマネージャーとして入部したのだ。

「さすがにテストはなかったけど、実力主義なのは一緒かも。初日からビシバシ仕事を仕込まれたし、遠慮なく言われるから泣き出しちゃった子もいたよ。先輩の話だと、辞めちゃう子も多いみたい」

「そうか」

「でも、その時先輩に聞いたんだけど、今まで最初のテストで一軍に入った一年生はいなかったんだって。やっぱり征くんは凄いね」

「俺だけじゃない。俺を含めて全部で4人だ」

赤司の赤い瞳は七海を見ていなかった。
何処か遠く──まるで未来を視ているような眼差しで、彼は「まだ始まったばかりだ」と告げた。

今思えば、彼にはこの4人が将来中核をなすメンバーになることが分かっていたのかもしれない。
そして、まだ「足りない」ということも。

全ての駒が揃ったのは、2年の始め、黄瀬涼太がバスケ部に入部した後のことだった。



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