七海が自分が担当している二軍のサポートの仕事を終え、片付けを終える頃には、一軍の練習も丁度終わったようだった。
体育館から出てきた集団がシャワー室に向かうのを見ながら、七海も更衣室へ向かう。

制服に着替えて更衣室を出ると、そこにはもう赤司が待っていた。

「早いね、征くん」

「今日は早めに終わったんだ」

壁に寄りかかっていた背を離して赤司が答える。
そのまま二人並んで歩き出した。

「来週の練習試合、お前が帯同することになった。準備しておいてくれ」

「うん。例の、交流戦だよね」

「ああ」

周辺地区の上位10校で行う交流戦は、非公式とは言え、お互いの実力をはかれる良い機会であるため、通常の練習試合とは熱の入り方が違う。

「今年は一年だけでやる予定だ」

「それが今年の制限?」

帝光だけは他と比べて飛び抜けて実力が高いため、制限付きでの戦いとなる。

「ああ、それと、黒子君も出ることになった」

「黒子くんも!?」

途端に七海は顔を輝かせた。

「そっか、デビュー戦になるんだね!頑張って欲しいなぁ」

「お前は本当に彼に入れこんでるね」

「あれ?焼きもち?」

冗談でからかうように言ってみたのだが、返ってきたのは困ったような笑みだった。

「そう思うならあまり妬かせないでくれ」

「う、うん…」

七海は何だか照れくさくなってうつむいた。
どうしよう。間が保たない。

「あ、猫…!」

この辺りの家の飼い猫なのだろう。
塀から降りた猫は、人懐っこく七海にすり寄ってきた。

「よしよし、いい子いい子」

撫でてやれば、ごろごろと喉を鳴らす。

「征くんも撫でる?」

「いや、俺はいい」

猫は七海の足元でにゃーと鳴くと、また塀に飛び上がった。
歩いていく先にはきっと家があるのだろう。

「でも、可愛いものを撫でたくなる気持ちは分かるよ」

赤司は名残惜しそうに猫を見送る七海の頭を撫でた。


 戻る  



- ナノ -