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洛山高校の体育館では、休日であることなど関係なく、いつも通りバッシュのスキール音が轟いていた。
二桁もの部員が一斉にダッシュするものだから、耳を聾する轟音と化している。

「チンタラ走ってんじゃねぇ!全速力で行け!!」

渇れそうな喉から声を絞り出して返事をし、体育館を端から端まで繰り返し往復する。
体力のない者は大抵これで脱落していく。
泣き声など通用するはずもなく、ひたすら必死に食らいついていくしかない。

「遅い!!」

すかさず先輩から怒声が飛ぶ。
体育館全体がビリビリと振動しそうなそれらを聞きながら、一足早くノルマを終えた一軍メンバーは休憩に入ろうとしていた。

「夏までにどれくらい減ってるかしらね」

「さあな」

実渕玲央がスポーツタオルで首筋を拭いながら走る部員達に目をやれば、根武谷永吉は捲り上げたシャツの裾で無造作に顔を拭いながら素っ気なく答えた。

「残る奴は残るし、無理な奴は脱落する。そういうもんだろ」

「その通りだ」

氷のような冷静な声で答えたのは、赤司征十郎だった。
一年生にして主将となった彼は、今や完全に部員達を掌握している。
逆らう者は皆無だ。
気概が無いから立ち向かわないのではない。
圧倒的な実力と正当性を持つ赤司に敵う者がいないというだけの話だ。

「脱落していく者には力が無かったというだけの話だ。だからこそ、僕はお前達を信頼している」

「おう!」

「期待に応えられるよう全力を尽くすわ」

赤司はちらりと笑みを見せると、そこから離れていった。

「あら、征ちゃん何処に……って、野暮だったわね」

赤司が向かう先は体育館外の通路。
その向こうからは一人の少女が歩いて来るところだった。
彼女は葉山小太郎と一緒で、何事か楽しそうに談笑しながら歩いている。

「葉山に死亡フラグが…」「あれは死んだな」などと囁く声が聞こえてきて、実渕は肩をすくめた。
彼も全く同感だったからだ。



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