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赤司くんを見ると、口がカパァッてなる日本人形をどうしても思い出してしまう。

もちろん、実際に赤司くんの目が金色になったり口がカパァッてなるわけじゃない。
あくまでもイメージだ。
例えば、真っ赤なスポーツカーが学校の前に止まって、中にはモデルみたいに綺麗なお姉さんが乗ってて、赤司くんが「やあ、わざわざ迎えに来て貰って悪かったね」「いいのよ征十郎」なんて会話をしながら颯爽と車に乗り込んでも納得してしまうような、あくまでもそういうイメージの話なのだ。

「アナタが言ってる人形は、たぶん人形浄瑠璃で使われる『ガブ』という種類のからくり人形じゃないかしら」

クラスメイトで仲良しの玲央ちゃんに密かに胸の内を打ち明けてみたところ、彼はちょっと考えてからそう言った。

「仕掛け糸を引くと、一瞬で口が裂けて目が金色になって角が出るヤツでしょ?」

「そう!そう!そう!それ!それ!それ!」

その瞬間の気持ちを何に例えればいいだろう。
例えば、心霊写真を見ていて、突然そこに写っている幽霊を見つけた時のような、背筋がゾワーッとなるような感覚だった。

「ガブって言うの?」

「そう。口がガブって開くから」

「OK把握した」

これ以上ないほど簡潔でわかりやすい説明だ。

「ね、玲央ちゃん、赤司くんには言わないでね。絶対に言わないでね。秘密にしてね」

「うふふ…どうしようかしら」

「玲央ちゃん!」



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