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赤司家の持ち物だという別荘は、とても風情がある日本家屋だった。
花火をしよう、と征くんに誘われて連れて来られたのだ。

縁側には、まだ使用後の花火が入ったバケツが置いてあるはずだ。

二人して浴衣を着て、縁側に並んで花火をした。

「綺麗だね」「そうだね」なんて話しながら赤やオレンジの花火を眺め、最後のシメは線香花火。
パチパチと爆ぜる火花は儚く、あっという間にぽとりと落ちた火の玉に何だか寂しいような切ないような気持ちになったのを覚えている。

私の手に彼の手が重なって。
それから……それから……。

「征くん…」

「そのままでいい。ゆっくりお休み」

乱暴に扱われたわけではなかった。
でも、抑えきれない激情がはっきりと感じられるくらい情熱的だった。
疲れというより、官能で腰から下が痺れている感じだ。

布団の上にお腹の中の赤ちゃんのような格好で横になったまま動けないでいる私に、彼は自分が着ていた浴衣を掛けてくれた。

「汚れちゃうよ…」

「気にしなくていい。それより、寒くはないかい?」

「うん、平気」

火照った肌に涼しい風が吹いてきて気持ちいい。
彼は箪笥から新しい着物を出して素肌にそのまま身につけた。
こういうのを何と言うか知っている。
確か、着流しというのだ。

彼が振り返った。
私の傍らに膝をついて座る。
裸のまま彼の浴衣を掛けられて寝ているだけの私より、素肌の上に直接着物を着た彼のほうが何故だか色っぽく感じる。

征くんは。
彼は、ゆったりとした手つきで私のお腹を撫でている。
何度も、何度も。
気持ちいいけど、目付きがちょっと怖い。

「征くん…?」

お腹を撫でる手はそのままに、彼は艶めいた笑みをこぼした。

「早く僕の子を孕むといいのに」


…征くんは時々怖いことを言う。



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