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「七海さん、好きっス」

「私も好きだよ涼太くん」

「じゃ、じゃあ…!」

ずいっと身を乗り出してきた涼太くんの、その柔らかな金髪をいい子いい子と撫でれば、完璧なまでに整った端正な顔がムッとしたようにしかめられた。

「俺は本気っス!」

「私もだよ」

「まーたやってんの?懲りないねぇ」

「姉ちゃん…くっ!」

ケーキと紅茶を乗せたトレイを手に部屋に入って来たのは私の大事な親友。
そして、このわんこのような黄瀬涼太くんのお姉さんでもある。
そもそも私は今日は彼女に会いにやって来たのだ。

「無理ムリ、七海はあんたの周りに群がってくる女の子達とは違うんだから」

「くっ…姉ちゃんは黙っててくれないっスか。これは俺と七海さんの問題なんス!」

「あはははははは!!だから無駄だってば!無駄ムダ!!」

「姉ちゃん!!」

豪快に笑う姉と、悔しそうな弟。
私にとっては見慣れた光景だ。

涼太くんのことはモデルになる前から知っている。
彼がモデルになったのは、彼の姉である私の友人が応募書類を送ったことがきっかけだった。
それからトントン拍子に人気が出て、今ではあちこちに引っ張りだこで、世の女子で知らない者はいないぐらいの有名人だ。

「もう、邪魔すんなって!」

「お邪魔なのはアンタ。七海は私に会いに来てるんだから」

「七海さんは俺のこと邪魔だなんて思ってないっスよね!?」

「うん、涼太くんとお話出来て嬉しいよ」

「ほら!」と勝ち誇ったような顔をする涼太くん。

「七海さん、愛してるっス」

真剣な表情でそう告げた涼太くんの頭を撫でる。

「うん、うん、私も愛してるよ」

「七海さん!」

瞳を輝かせる涼太くんはは、私にとっては弟みたいで可愛い存在だった。

とりあえず、今は、まだ。

いつかは懐いてくる大型犬のような彼の事を“男”として見られるだろうか。
うーん…想像出来ない。

「涼太くんって女の子いっぱい泣かせてそうだしなぁ」

「そ、それは本気じゃないから、というか……七海さんの事は泣かせたりしないっス!絶対大切にするっスよ!」

「えー…本当かなぁ」

「本当っス!俺の愛を疑うスか!?」

「うーん…」

「悩む必要ないでしょ!姉ちゃんは笑うなっス!」

爆笑している姉に食ってかかる涼太くんは可愛くて、やっぱり弟のようだと感じた。
そう思ったのを察知したのか、涼太くんがさっと振り返った。
世の中の女の子の大半がクラッときそうな切なげな表情で私を見る。

「七海さん、愛してる」

「有難う」

「ちょ、本気の本気っスよ!」

「はいはい」

本当になんて可愛い子だろう。
私は美味しそうなケーキにフォークを刺した。


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