直に部室の床と接触している背中がひやりと冷たい。 目の前には赤司くんの端正な顔。 息遣いが感じられるほど近くから赤司くんに見下ろされている。 「あ、赤司く、」 「誰にあげるつもりだったんだい?」 「え…な…なに…?」 「チョコレート。実渕と葉山と根武谷と、それから?」 「えっと、一応部員の人全員に…」 「その必要はないよ。今年から義理チョコは廃止だ」 「えっ」 「俺がいま決めた」 「ええっ」 「それにしても余裕だね。こんな状況なのに」 赤司くんは笑っている。 優しい微笑みについ勘違いしそうになるけど、許して貰えたわけではなく、身体はまだ押し倒されたままだ。 顔の両側についた赤司くんの腕のせいで横を向くことも出来ない。 「ひゃっ…!」 思わず変な声が出てしまった。 赤司くんの右足は私の脚の間にある。 その膝が、あらぬ場所をぐりっと擦るように押し付けられたせいだ。 「ああああ赤司くん!?」 「もう決めたんだ。悪いが諦めてくれ」 ふっと笑った赤司くんの唇が私の唇に重なる。 そこは少し乾いていて柔らかかった。 「赤司くん、あ、んっ!」 「チョコも君も俺が貰うよ」 |