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好きな食べ物は?と聞いたら

「オニオングラタンスープ!」

と元気な返答がかえってきたので、それはスープジャーに入れて持って行くとして。
問題はメインとなるおかずだ。
男の子だから沢山食べるだろうし、やっぱりお肉系がいいかな。
あれこれ悩んだ結果、とりあえず、唐揚げだけは決まった。

仕込みは前夜から。
皮と分けて、食べやすい大きさに切っておいた鶏ムネ肉をビニール袋に入れてよく揉み込み、空気を抜いて縛ったら冷蔵庫へ。
一晩置いたそれを翌朝取り出し、キッチンペーパーで水分をしっかり取ってから片栗粉をまぶす。
フライパンに多めのごま油を入れて熱し、片栗粉をまぶした肉を入れたら蓋をして揚げ焼きにする。
焼き色が付いたらひっくり返してこんがりとなっていたら出来上がりだ。

それにサラダや焼き魚を付け合わせとして添える。

出来上がったそれらをお弁当箱に詰め、バッグに入れてクーラーボックスと一緒に練習試合が行われるという体育館へと持って行った。


「七海さん!」

体育館の入口から中を覗き込むと、すぐに大きな声で名前を呼ばれた。
あっという間に私を見つけた涼太くんが駆け寄ってくる。
さっきまでアップをしていたのか、美貌に汗が光っている。

「来てくれたんスね!」

「約束したからね」

「嬉しいっス!」

気のせいか、涼太くんの後ろにふさふさした犬の尻尾が見えた。
それがぱたぱたと動く様まではっきり見えるようだ。
わんこなのに美形。
美形なのにわんこ。
思わず吹き出しそうになった。
元から綺麗な子だったけど、高校二年生になった今は男らしさが増して大人の男性へと近付きつつある。
美貌にも磨きがかかっているようだ。

「なんだ、黄瀬、噂のカノジョさんが来てんのか?」

「そうっス」

「違います」

チームメイトの冷やかしに同時に私達は違う言葉を返した。

「初めまして。涼太くんのお姉さんの友達の七瀬七海です」

「なーんだ」とあちこちから声が上がる。

「黄瀬、お前嘘つくなよ。まだ付き合ってねぇんじゃん」

「嘘はついてないっスよ。これからカノジョになる予定なんで」

しれっとした顔で答えた涼太くんのバックで号令がかかる。

「じゃあ、七海さん、俺の勇姿しっかり見といて下さい」

色っぽい流し目をくれて、涼太くんはみんなのほうへ走って行った。

いよいよ始まった練習試合は、素人の私から見ても凄いものだった。
特にエースである涼太くんの活躍には目を見張るものがあった。
明らかに頭一つ分くらい飛び抜けている。
前半が終了するまで相手チームは1点もいれられないままだった。

「七海さん!お弁当!」

「はいはい、どうぞ」

首にタオルを掛けた涼太くんが瞳をキラキラさせてせがんでくるので、私は笑って用意してきたお弁当を彼に渡した。

「うまい!うまいっス!」

直ぐ様食べ始めた彼は、何か一つ食べるごとにうまいを連発する。

「オニオングラタンスープも最高っスけど、特に唐揚げが絶品っス!」

唐揚げを頬張りながらそう言う彼を見て、仕込みから頑張った甲斐があったと思った。

「結婚したら毎日美味しいご飯が食べられるんスね!幸せだなあ」

「涼太くん、私達まだお付き合いもしてないからね」

「そうやってお姉さんぶってられるのも今の内っスよ。今に俺なしじゃ生きていけないカラダにしてやりますからね」

ご飯粒ほっぺにつけて言っても可愛いだけだよ涼太くん。


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